ローカル5Gの導入検討ってどうするの?

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1. 無線通信あれこれ

最近少しずつローカル5Gというワードが巷で聞こえるようになってきて、ローカル5Gを担当している筆者は非常にうれしく思っています。もっとローカル5Gが流行ってくれたら嬉しいと思いますが、そもそも導入を検討すると言っても何から考えればいいのかよくわからん、何が出来るかよくわからんという方が多数だと思います。
なので今回はそもそもの1st stepである導入を検討するところを記事にしてみたいと思います。
全てを書こうとするとかなり長い文章になってしまうためあくまでイメージとして読んでいただけると幸いです。

1-1. 各無線通信の特徴を捉える

ローカル5Gというものが何となくどんなものか調べたらわかるという方はたくさんいらっしゃると思うのですが、じゃあローカル5Gをそもそも導入すべきなのかどうかのかを考えた時に他の無線もわからないと比較ができないですよね。
以前のコラムで「ローカル5GとWi-Fiの構成の違い」という記事を書いていますが、Wi-Fiはローカル5Gと同じ無線通信なので無線というカテゴリの中では比較対象となります。
その他にも今はプライベートLTEである自営BWAやsXGPなど様々な無線通信があり、各ソリューションの長所や短所がわからないといまいちやりたいことに対して何を導入するべきなのかがわからないと思います。
簡単ですが下記に長所と短所をまとめました。

表 各無線通信の特徴(長所と短所)の比較

※あくまで担当者の主観です
こう見ると自社内に導入する設備としてローカル5Gはハイスペックな無線通信だということが分かります。
他にも無線通信規格は様々ありますがある程度の情報を持っておくとやりたいことに対して何が必要かというのもわかりやすいと思います。

1-2. 無線vs有線

無線通信の特徴を色々と考える際にそもそもの話で有線通信と無線通信を比べる必要も出てくると思います。
(導入検討されている方に対しては釈迦に説法だと思いますが・・・)
無線と有線を比べるときに下記の表のようになると思います。

表 有線通信と無線通信の特徴の比較

有線と比べて無線は容量に対して少し弱いところがありますが、「配線がない」というのは強力なアドバンテージがあります。動き回るものに対してネットワークを展開するのであれば間違いなく無線ですね。
例えば自動運転や遠隔運転を行いたい場合配線があるとなかなか実現しないと思います。そういう場合はやはり無線が向いていると思います。
そして固定するものでも配線がないというのは非常に強く、例えばIoT等で固定されたセンサーから情報を取ってくるのであれば有線でもいいじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、多数の機器に配線をするのは億劫ですしメンテも大変になります。また機器の入れ替えが発生した場合配置転換が有線の場合困難になる為後々の流用性を考えると無線は有用です。
しかし安定性は有線のほうが強く通信容量も有線のほうが大きい為扱うソリューションによってどちらをどう使うかというのは考えなければなりません。

2. 5Gが必要か考えてみよう

ローカル5G導入について色々比較を見てきたので実際に導入について考えてみましょう。
各無線の特徴で記載しましたがローカル5Gはハイスペックな無線です。しかしその分導入時の価格帯はまだまだ高く、気軽に導入できるものではありません。
(価格については将来的にはもっと安くなる可能性は十分にあると思います)
では検討の際に何を考えるべきなのか、というところを記載していきます。

2-1. したいこと、できること

ローカル5Gは様々なソリューションと組み合わせることが出来ます。
選択肢が多いので「このソリューションに5Gが必要なのか?」と迷われる方が多いと思います。
例えば「工場のDX化」をしたいと思った時にローカル5Gを導入する必要があるのかどうなのかを考えてみましょう。

工場のDX化をする際にローカル5Gを導入するかどうかを考える場合、まず最初にDX化の対象となる「面積」を考えるといいでしょう。
工場といっても大きさはまちまちで京葉工業地域にあるような巨大なプラントもあれば町工場のような場所もあります。
また屋内で基本的に構成されている工場もあれば屋外で作業を行うような工場もあると思います。
屋内であればDX化を行う「面積」については意外に小さい可能性もあります。
5Gはハンドオーバーが得意である為、広域なエリアをカバーするのに長けています。
なので複数の建屋があって、建屋間を自動運転ロボットがバリバリ走るようなソリューションであったり遠隔運転で工場の敷地内を動き回るようなものに向いています。
逆に小さい建屋の中で限られたエリアでの通信であれば5Gは分不相応になる可能性があります。

次に工場のDX化を例に考えることとしては「リアルタイム通信の可否」というところでしょう。
限られたエリアであっても即時性を求められるソリューションを導入したい場合は5G導入に向いています。以前弊社のコラムで韓国の事例を掲載していますが、その中でAIに周辺状況や在庫等を判断させて自動運転するロボットのシステムが紹介されていました。
周辺状況は刻一刻と変わるもので、ロボットと人間の衝突、あるいは高価な機材との衝突というのはあってはならないことだと思います。
そういったソリューションであればローカル5Gは向いています。
逆に一定時間でのデータ送信を行うようなIoT機器を設置するだけであれば状況にもよりますが分不相応になる可能性があります。

例を2個挙げましたが分不相応と紹介したものもローカル5Gが使えるかどうかで言えば使用は出来ます。
しかし明らかにオーバースペックになる場合があり、将来的に通信容量を使うソリューションを導入する予定もないということがあればお金の無駄になってしまいます。
ローカル5Gは無線通信の中でもハイスペックな無線なので出来ることは非常に多いです。しかしそれは本当にローカル5Gでないといけないのかを考えなければなりません。
総務省から導入に関する関連資料が掲載されているので是非こちらもチェックしてみてください。

「ローカル5G等導入に係るコンサルティングマニュアル(改訂版)」

2-2. ローカル5Gを選んでみる

では実際にローカル5Gが必要になった!となった場合にまた選択の問題が出てきます。
実はローカル5Gには様々な機器の種類があります。単純にローカル5Gの機器ならどれでも一緒というわけではなく、それぞれの機器に得意分野があります。
得意分野というとわかりにくいと思うので製品紹介をもって例を挙げます。
例えば弊社が取り扱っているQCT製のOmniPODの得意分野は「可用性」が一番の特徴になると思います。
下記はOmniPODの構成です。

図 OmniPODの構成

絵を見るとCore Serverが2つあることがお分かりいただけるかと思います。
これはCoreが冗長構成になっており、もし片方のCoreにトラブルが起きたとしてももう片方のCoreでサービスが続けられるようになっています。
そしてオンプレ構成なので予備機があれば自分たちで入れ替えが実施できるのです。
またFHGWには複数のRRUを接続することができる分岐システムが搭載されているのでRU単位での冗長エリアを容易に作ることが出来る為全体的に可用性が高い機器となります。
Coreのオンプレ+冗長化というのはあまり同様の製品を見かけないので大きな特徴だと思います。
この可用性を活かす、という部分のみで考えるのであれば、自動運転であったり医療系などの人命が関わってくるソリューションには活かしやすいスペックじゃないかと思います。
もちろんOmniPODには得意分野はまだあるので他にも様々な場面でお使いいただくことは可能ですが、敢えて言うのであれば小さい規模でのIoTだったり、状況にもよりますがスマート農業でトラクターを数台動かすような少数UEかつ接続が切れても秒単位の判断が迫られなさそうなソリューションに関してはややオーバースペックになる可能性があります。

他にも例えば大きく分けて超高品質な通信キャリアスペックの機器やRAN部分が一体化したスリムな機器、Coreまで一体になっている機器などがあり、全て得意分野があります。
RAN一体型は値段としてローカル5Gの中では安めになる傾向があるので、小さい規模のIoTやスマート農業のような先ほどOmniPODで出したオーバースペックになる部分に関しても適正なスペックになる可能性が高いです。
じゃあRAN一体型の機器なら何でも得意かというとそうではなく、大規模工場の自動化を見据えた設置であればキャリアスペックの機器やOmniPODのほうが得意になってくるでしょう。
ローカル5Gなら何でもいいというわけではないので各機器を見てみて特徴を洗い出し、自社のソリューションに一番合ったものを使用するというのが大事です。

3. まとめ

今回はローカル5Gの導入検討について書いてみました。
ローカル5Gの情報はそれほど出回ってるわけではなくまだまだ見えない部分というのも多いと思います。
ローカル5Gはそれだけで何かが出来るわけではなく他のソリューションと組み合わせて使うものなので、是非このコラムから少しでも情報を発信することでソリューション導入検討やソリューション構築に活かせていただけるようであれば幸いです。

またもっと導入について詳しく聞きたい!といった方やローカル5Gに興味が御座いましたら当社のまちづくりラボにお越しいただき実機実演を踏まえたお話をさせていただければと思います。