ローカル5Gの事例紹介③

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1. スマートシティにおける見守り:大学跡地での実証例

「スマートシティ」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?少子高齢化が進行する中、地方都市でも高齢化や人手不足が深刻化しています。こうした課題に対処するため、ロボット技術や人工知能(AI)、インターネット・オブ・シングス(IoT)の活用が注目されています。本実証実験では、移動体搭載カメラとAI画像認識を用いた高齢者や障がい者、子ども等の見守りシステムを「スマートシティ」として導入しました。この実証実験は、奈良県三郷町の奈良学園大学三郷キャンパス跡地を再利用するプロジェクトとして実施されました。

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図1:実証地の奈良県三郷町(総務省資料より)(*1)

株式会社長大によるこのプロジェクトは、奈良学園大学三郷キャンパスの移転に伴い、跡地を活用して全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」を目指しています。跡地を3つのゾーンに分け、高齢者・障がい者支援、子どもや若者の学びの場、企業のサテライトオフィスなどを設ける計画です。坂道や交通の課題には自動運転車両や顔認証技術を導入し、内閣府の未来技術社会実装事業に選定されました。ICTを活用した防災・防犯対策を進める中で、地域の見守りや通信インフラの整備も行っています。

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図2:実証全体図(総務省資料より)(*2)

当社の製品もこのスマートシティの実証実験に参加しています。京セラみらいエンビジョンが取り扱う台湾のQCT社(Quanta Cloud Technology Japan株式会社)のローカル5G設備が使用されました。

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図3:ローカル5G概要構成図(総務省資料より)(*3)

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写真1:ローカル5G設備の写真(総務省資料より)(*4)

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表1:ローカル5G機器一覧(総務省資料より)(*5)

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図4:ローカル5G機器コア装置(総務省資料より)(*6)

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表2:ローカル5G機器コア装置の諸元(総務省資料より)(*7)

2. 実証実験-顔認証システム等の検証

今回の実証実験では、顔認証システム、人物・物体検知システム、車番検知システムの有効性が確認されました。それぞれのシステムが移動体に搭載された際の実運用が可能かどうかを検証し、現時点の課題や今後の課題解決策についても検討が行われました。

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図5:各システム概要図(総務省資料より)(*8)

2.1 実証概要

① 顔認証システム

② 人物・物体検知システム

③ 車番検知システム

2.2 実証目標

目標基準値: カメラを移動体に搭載して画像解析を行った際に、速度や画角など移動体ならではの諸条件の下で、各機能が適切に機能するかどうか。

目標: 上記目標基準値に対して、現時点の課題、あるいは実証を通して明らかになる課題に対する解決策の検討。

2.3 システムごとの適切な機能

- 顔認証: 事前に登録した個人と照合が可能で、アラートが上がるかどうか。

- 人物・物体検知: アノテーションにより学習したモデルと相違ない検知が可能かどうか。

- 車番検知: ナンバープレートの情報を漏れなく取得できるかどうか。

実証実験を通して、各システムの実運用に向けた課題と解決策が明らかにされました。

① 顔認証システム

顔認証システムは、対象人物の顔を高精度に認識し、セキュリティや見守りに利用するシステムです。本実証では、AI技術を駆使して、高齢者や障がい者の見守りや、不審者の検知を目的としました。結果、システムは高い認証精度を示し、特に夜間の監視において効果的であることが確認されました。顔認証システムの導入により、見守りの効率が大幅に向上し、特に徘徊や迷子の発見が迅速に行えることが証明されました。

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写真2:顔認証試験風景(総務省資料より)(*9)

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写真3:顔認証機能の実証結果の写真(総務省資料より)(*10)

②人物・物体検知システム

人物・物体検知システムは、AIを用いて監視カメラの映像から人物や物体をリアルタイムに検出・追跡する技術です。この実証では、大学キャンパス内の広範囲なエリアでの実施が行われました。結果として、システムは移動体に搭載されたカメラからの映像を解析し、動く対象物を正確に検知できることが示されました。特に、子どもや高齢者の見守りにおいては、危険な状況を未然に防ぐことができ、従来の固定カメラではカバーできない広範囲の監視が実現しました。

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写真4:学習時に使用された訓練画像(総務省資料より)(*11)

③車番検知システム

車番検知システムは、監視カメラの映像から車両のナンバープレートを自動的に認識・記録する技術です。本実証では、キャンパス内の駐車場や出入り口での車両監視に使用されました。結果として、システムは非常に高い精度でナンバープレートを読み取り、不審車両の出入りを監視することができました。また、車番検知データをリアルタイムで警備員と共有することで、迅速な対応が可能となり、キャンパス内のセキュリティが大幅に強化されました。

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図6:固定カメラの見守り範囲(総務省資料より)(*12)

これらの実証実験を通じて、ローカル5Gを活用したAI技術による見守り・監視システムの有効性が確認され、従来の固定式カメラに比べて広範囲かつ柔軟な監視が可能であることが証明されました。特に、移動体カメラの活用により、死角のない全方位的な監視が実現し、地域住民の安心・安全な生活環境の構築に大きく寄与する結果となりました。

3. まとめ

今回は、奈良県三郷町のスマートシティにおけるローカル5Gの実証実験に焦点を当て、その成果と可能性について探りました。具体的には、大学跡地を利用して、顔認証システム、人物・物体検知システム、車番検知システムを活用した見守りや監視の実証が行われました。

これらのシステムは、高齢者や障がい者の見守り、子どもや若者の安全確保、不審者の検知において高い効果を示しました。特に、移動体に搭載されたカメラを用いることで、広範囲かつ柔軟な監視が可能となり、従来の固定カメラではカバーしきれないエリアの監視が実現しました。

この実証実験を通じて、ローカル5Gを活用したAI技術による見守り・監視システムの有効性が確認されました。これにより、地域住民の安心・安全な生活環境の構築に大きく寄与することが期待されています。

さらに、当社京セラみらいエンビジョンでも、このような技術の導入・検証をサポートし、その有効性を確認できるよう、短期間から利用できるサブスクリプションプランもご用意しております。長期的な導入コストを抑えつつ、最新技術を活用したシステムの導入をご検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

【参考資料】
総務省「スマートシティにおける移動体搭載カメラ・AI 画像認識 による見守りの高度化」
令和3年度ローカル5G開発実証報告書 No.19 『スマートシティにおける移動体搭載カメラ・AI画像認識による見守りの高度化 』
[全体版]
*1:5頁「図1.2 1 全体概要図」
*2 :10頁「図1.2 5 FSS 35 キャンパス構想」
*4:57頁「図3.2 2 ローカル 5 G センター装置 設置風景」
*5 :17頁「表2.3 1 ローカル 5 G 機器一覧」
*6:18頁「図2.3 2 コア装置 (5 GC)」
*7:18頁「表2.3 2 コア装置 (5 GC) の諸元」
*9:173頁「図4.4 4 顔認証試験風景」
*10:184頁「図4.4 11 顔認証機能(昼間)の実証結果」
*11:182頁「図4.4 10 学習時に使用された訓練画像の例」
*12:177頁「図4.4 7 固定カメラの見守り範囲」
[概要版]
*3 :10頁「ローカル5G技術実証システム構成」
*8:16頁「各システム概要図」