ローカル5Gの事例紹介②

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1. スマート農業の未来への道:北海道での実証例

「スマート農業」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?少子高齢化が進行し、農業分野では生産者の高齢化や人手不足が深刻化しています。このような課題に対処するためには、生産性や収益性の向上、そして農作業の負担軽減が不可欠です。そこで注目されているのが、ロボット技術や人工知能(AI)、そしてインターネット・オブ・シングス(IoT)を駆使した「スマート農業」です。
特に、スマート農業には高速で広範囲な無線通信が欠かせません。また、自動走行トラクターなどの農機を遠隔で制御することは、効率的な農業運用においてますます重要となっています。
このような課題に対処し、未来の農業を切り拓くために、ローカル5Gという第5世代移動通信システムの技術を活用した実証実験が行われています。この実証実験では、地域や産業のニーズに柔軟に対応できるかどうかを検証し、スマート農業や地域の課題解決に向けた新たな可能性を模索しています。
弊社の製品も北海道のスマート農業のこちらの実証実験に参加しています。

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図1:実証地の北海道岩見沢市(総務省資料より)(*1)


こちらは、東日本電信電話株式会社様による、岩見沢市スマート・アグリシティ実証コンソーシアムで、京セラみらいエンビジョンで取り扱っている台湾のQCT社(Quanta Cloud Technology Japan株式会社)のローカル5G設備が使用されました。(構成図、現地の写真は次のようになっています。)

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図2:ローカル5G概要構成図(総務省資料より)(*2)


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写真1:ローカル5G設備の写真(総務省資料より)(*3)


今回メインとなったのはトラクターの自動運転で無人で農作業を実施することのほか、ビックデータを用いた農作業の省力化、排水路管理システム導入による水害リスクの低減、ウェアラブル機器による住民の熱中症重症化リスクの低減などがありました。

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図3:実証全体像(総務省資料より)(*4)


実際は現地に既に地域BWAやLPWAといった前の世代の通信システムが導入されていること、また、キャリア5Gも今後普及することが想定されていることから、そういった今現地にあるシステムとの接続性や干渉についても検証がされました。

2. 実証実験-
自動トラクター等の農機の遠隔監視制御による自動運転の実現など

今回の実証実験では実際にそれぞれの有効性が確認されコンバインなど別の機械や、地方ではどういったモデルが導入の基礎的なものになるかについても確認がされたようです。
農業領域では、自動走行トラクター遠隔監視制御が実証され、自動走行トラクター等の圃場内複数台協調作業、異なる圃場内の複数台協調作業、圃場間移動の遠隔監視下での安全な運用の実現が目標とされました。無人トラクターの外観や走行試験の様子、監視センターの様子は次の写真のようになります。

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写真2:無人トラクター外観及び寸法(総務省資料より)(*5)

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写真3:無人トラクターの停止位置の有人の場合との比較実験の様子(総務省資料より)(*6)

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写真4:トラクター等の遠隔監視センターの様子(総務省資料より)(*7)


農業領域ではもうひとつ、ビッグデータ収集が実証され、営農稼働やコスト削減に向けた、農作業データ、気象・土壌等のデータを収集するシステムの構築、収集したデータを利用した、作物の生育ステージの推定、必要な作業実施期間の推定、最も効率的な作業集約日程の推定についての試算が目的とされました(図4)

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図4:ビッグデータ収集のプロセス(総務省資料より)(*8)


いろいろなデータを現地から集めそれを効率的な作業に活用するといった感じです。
生活領域では、排水路監視が実証されました。水害リスク低減に向けた、複数の無線通信を使用した排水路監視システムの構築による、水位センシング、自動アラート、遠隔監視の実現、水位異常発見時の情報伝達時間測定による災害リスク低減などが目標とされました。現地の様子や実際のシステムの様子が画面等でわかる資料が次の資料になります。

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資料1:排水路監視システムの機能、監視ソフトウェアの説明(総務省資料より)(*9)


排水路がカメラ画像で監視され水位を確認でき、現地のシステムの状態等も表示され確認できるようです。
また、生活領域としてもう一つ、健康管理等について実証され、高齢者の熱中症等発生・重症化リスク低減に向けた、ウェアラブル機器による生体情報の把握、家族等への遠隔通知の実現と、サービスの連続運用性、健康リスク低減が目標とされました。

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図5:健康管理システム概要(総務省資料より)(*10)


様々な製品が開発されシステムとして構成されて健康管理が少人数でできるようになっているようです。

3. まとめ

今回は、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトにおけるローカル5Gの実証実験に焦点を当て、その成果と可能性について探りました。具体的には、自動走行トラクターの遠隔監視制御や排水路の遠隔監視など、ICT/IoT技術を活用した農業生産性の向上が試されていました。
さらに、ローカル5Gを使用した通信インフラの実証が行われ、農業生産現場におけるリアルタイムな情報共有が可能となり、効率的な作業管理が実現されました。
この実証実験を通じて、スマート農業の推進と地域社会の発展を目指す取り組みが具体化され、ローカル5Gが農業分野における革新的な解決策としての役割を果たす可能性が示されました。今後も、技術の進化と地域特性に即した施策の推進が重要です。これにより、持続可能な農業経営と地域コミュニティの活性化が進むことが期待されています。

京セラみらいエンビジョンでも、まずは導入・検証してその有効性を確認できるよう、短い期間から利用できて、長期的な導入のコストが抑えられる、サブスクリプションプランもご用意しておりますので是非お気軽にご相談ください。






参考資料
総務省「農業分野の課題解決(自動トラクター等の農機の遠隔監視制御による自動運転等の実現)に向けたローカル 5G 等の技術的条件及び利活用に関する調査検討の請負成果報告書」

*3:28頁「図 3.1.5 ローカル5Gセンター設備」
*5:230頁「図 5.3.43 遮蔽物トラクター外観および寸法」
*9:143頁「図 4.5.10 地区全体画面、図 4.5.11 水位詳細画面」
*10:119頁「図 4.3.84 アラート通知イメージ」

*2 総務省「農業分野の課題解決(自動トラクター等の農機の遠隔監視制御による自動運転等の実現)に向けたローカル5G等の技術的条件及び利活用に関する調査検討の請負 報告書 概要版」
資料18-1 検討の方向性(案) 25頁

*1:3頁「実証地域」
*2:7頁「ネットワーク構成概要、ローカル5Gネットワーク構成概要」
*4:5頁「実証全体像」
*6:10頁「課題解決システム1自動走行トラクター遠隔監視制御」
*7:10頁「課題解決システム1自動走行トラクター遠隔監視制御、遠隔監視からの安全な運用」
*8:11頁「課題解決システム2ビッグデータ収集」