ローカル5GとWi-Fiの構成の違い

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1. 競合するローカル5GとWi-Fi

ローカル5Gを導入するにあたって、まず絶対といって良いほどに競合するのがWi-Fi。

ユースケースなどを探して見てもWi-Fiが比較に入っているものがすぐに見つかるので、ここをご覧になっている方は既にご覧になっているかと思います。

さて、そんなWi-Fiとローカル5Gですが、これだけ比較されているにもかかわらず探しても見つからなかったポイントがありました。

そのポイントは利用者が意識する場面もそれほど多くないと思いますが、システムのアーキテクチャを検討、構築する方々にとっては重要な問題になってくる場面がないとはいえません。

無論、ネットワークに詳しい方ならわざわざ書く必要もなく、「そんなの当然でしょ?」といわれてしまいそうですが、お客様と話している中でこの違いを認識していない方が結構いらっしゃるように感じます。

2. ローカル5GとWi-Fiの異なるポイント

その違いが何かというと簡単に書くと、接続するレイヤとポイントです。

この説明で「なんだ、そんなこと当然でしょ」と思ったかたはこの先読む必要はありません。

以降はそれ以外のかた向けに書かせて頂きます。

まず、Wi-Fiについては無線LANと呼ばれるように、レイヤ2で接続されます。
Ethernet部分での接続になるので、Wi-Fi APを有線に置き換えるとスイッチングHUBなどで繋いだのと同様です。

また接続するポイント(Access Point)はWi-Fi APの機器内にあります。

ちなみにご家庭用のWi-Fiの場合はWi-Fi Routerが多いですが、その場合はプロバイダ側にRouterがつくイメージです(Routerモードの場合)。

local5g_0001_01.pngそれに対し、ローカル5G(キャリアの5Gの場合も同じですが)では各UE(端末)がレイヤ3での接続になります。

5Gを標準化している3GPPではTS 23.501 Release 18 [Sec. 5.8 User Plane Management]にSMF(Coreにある機能の一つ)はUEに対するDHCPサーバとして動作すべきとの記述がありますので、User Plane(データ通信の通り道)においてUEはデータ通信のためにIPアドレスを持っていることになります。

また、TS 29.561 Release 18 [Sec. 8 Interworking with DN (IP)]では接続するポイントがUPFにあることが記述されています。加えて、外部ネットワークからはUPFがRouterとして見えるとも書かれているため外部ネットワークとUEの間は別ネットワークとなることが分かると思います。

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引用: 3GPP TS 29.561 V18.2.0 (2023-09) Figure 8.2.1-1

更に付け足すならば、Wi-Fiの場合は端末に通信モジュールが内蔵されているケースが多いけれど、5Gではスマホやタブレット以外ではMobile Routerを経由してテザリング等で接続されるケースが多いということです。

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「接続するポイントがUPFにある」と聞いてもどういう影響があるかピンとこない人もいると思いますが、簡単にイメージするなら「ケーブルを挿すコネクタの位置」となりますので、UE(または、その下のデバイス)同士が通信するときに折返す為の最短距離ということになります。

実際にはシステム上でUE同士の折返しを許可しているかも考慮する必要がありますが、折返しが可能な場合でもUPFまではトラフィックが通るため、トラフィックの容量計算を行う場合には折返しの通信も考慮する必要性があります。

3. Wi-Fiからローカル5Gへの移行

それでも、Wi-Fiで検討されていたシステムを移行してローカル5Gに変更するなど「どうしてもローカル5Gを通してWi-Fiのように同一のネットワークで接続したい」ということもあるでしょう。

そんな場合にはInternet VPN技術を利用することで実現が可能となります。

TS 29.561 Release 18 [Sec. 8 Interworking with DN (IP)]にも記載がありますが、InternetVPNを利用することにより、Private IPアドレスを外部ネットワークに伝搬することが可能です。

local5g_0001_04.png

引用: 3GPP TS 29.561 V18.2.0 (2023-09) Figure 8.2.2.1-2


ただしこの場合でも、ネットワークが変わってしまう(間にRouterが入る)ので、同一のネットワークとして接続する場合はL2TP(RFC 2661)と組合せます。

L2TP+IPsecでは複数のネットワーク越しに同一ネットワーク上の通信が可能となり、機器と設定次第ではVLAN Taggingによって複数ネットワークを透過することも可能になります。

その場合は、UEはPort Forwarding、またはVPN Path throughといった機能を搭載したものを選ぶと良いでしょう。

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京セラみらいエンビジョンでは上記に対応したUEの取り扱いだけでなく、VPN Routerの構築を含めネットワークシステムについてもお手伝いすることが可能ですので、お気軽にご相談ください。