1. GDP第5位の日本と設備投資について
日本経済は長期的に見て緩やかな成長にとどまっており、相対的な経済的地位の低下が言われています。
昨年話題になったように、名目国内総生産では中国、そしてドイツにも抜かれ第4位となりました。今年はインドにも抜かれ第5位という見通しも出ています。
今回はその一因として指摘されている設備投資について記載します。
2. 設備投資額の比較データ
国際的に設備投資額を比較すると、日本の設備投資の推移は主要国に比べて低水準にあります。この傾向は近年だけでなく、内閣府発表の以下のグラフによると、過去数十年にわたる長期的なトレンドとして確認されています。

※内閣府 令和4年度 年次経済財政報告より引用
他国では、AIを代表するデジタル化への対応を目的とした大規模な設備投資が進行中です。新技術の導入やインフラ整備が成長の原動力となり、これが日本との成長格差を広げる要因いわれています。
3. デジタル投資額と経済成長率の相関性
設備投資と経済成長には密接な関係があります。設備投資は新技術の導入や生産能力の向上に直結し、それが経済全体の生産性向上につながります。デジタル投資に着目して考察してみましょう。
経済産業省の過去数十年間のデータ分析では、デジタル設備投資が増加している国ほどGDP成長率が高い傾向が確認されています。

※経済産業省 2022年通商白書より
白書の中でもこう記載されています。
"世界では、新たな技術やビジネスモデルの多くを、デジタル関連企業が創出している中、我が国はデジタル技術のもたらす「重要性」、「変革の大きさ」、「スピード感」について官民双方とも認識が不足し、また、既存の組織・業務・生活様式の継続を前提にした個々のパーツのデジタル化に終始した結果、デジタル大変革への対応が遅れ、産業全体で競争力を喪失した。"
※経済産業省 2022年通商白書より https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/2022honbun/i1320000.html
行政自らの姿勢も問うという辛らつな指摘です。
日本でも、今こそこの相関性を意識した政策、経営が求められます。DXやAI、5Gといった先端技術を取り入れるためのデジタル投資を増やすことにより、企業の競争力を強化し、経済全体の成長を享受することが可能ということでもあります。
4. 日本で設備投資を増やす意義
日本が設備投資を増やすことは、いくつかの重要な意義を持ちます。
第一に、国内の主要産業分野における生産性向上が期待されます。特に製造業やIT分野におけるDXやAIの活用は、競争力を高めるカギとなります。第二に、新しい技術やプロセスの導入は、イノベーションを促進し、国内市場だけでなくグローバル市場での競争力を向上させます。特にAIやロボット技術、自動化システムを導入することで、限られた労働力を効率的に活用し、生産性の向上が期待されます。これにより、人口動態の変化による経済への悪影響を最小限に抑えることが可能です。
また、地方自治体や公共インフラ分野との連携による持続可能な成長基盤の構築も重要です。例えば、地方での新エネルギー設備やスマートシティ開発への投資は、地域経済の活性化と全国的な成長の両立を可能にします。5Gネットワークを活用したスマート農業や遠隔医療の導入も、地方創生の一環として注目されています。
一方で、日本の経営の傾向として、投資を控える傾向が見られます。潤沢なキャッシュを持った企業でも、短期的なリスクや不確実性を理由に設備投資を先延ばしにすることで、成長の機会を失う可能性があります。しかし、積極的な投資は長期的に見て企業の成長につながり、競争力の強化や市場シェアの拡大をもたらします。特にDXやAI、5Gといった先端技術への投資は、変化の激しい市場環境で生き残るための鍵と言えます。
5. 結論
設備投資は、企業の長期的な成長を支える重要な基盤であり、それは最終的に日本全体の経済成長を促進する要因となります。DXやAI、5Gを取り入れることで、新技術の導入や生産性の向上が進み、国内外の市場での競争力が強化されます。
さらに、設備投資の増加は単に経済指標を改善するだけでなく、雇用の拡大や地域の活性化といった社会的な効果ももたらします。これらの成果を実現するためには、政府と企業が連携し、積極的な投資促進策を講じることが求められます。
日本経済がさらなる成長を遂げるためには、DX、AI、5Gといった先端技術を活用しながら、設備投資を増やし、新しい時代に対応した経済構造を築くことが不可欠です。
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