ローカル5GとDXについて

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1. そうだ!ローカル5GでDXしたらいいんだ!

DX、デジタルトランスフォーメーションという言葉が世間で騒がれてからかなりの年数が経ち、このコラムをご覧いただいている皆様も社内のDX化に取り組まれた経験があるのではないでしょうか。また今まさに取り組んでいらっしゃる方も多いかもしれません。
京セラみらいエンビジョン(以下、当社)のL5Gを見学される方から「DX化をしたいのですがローカル5Gで何かできないか確かめにきました」とおっしゃる方が一定数いらっしゃいますし、そのようなご相談をいただくこともしばしばございます。
「ローカル5Gといえば最先端の通信技術だし、DXと相性抜群!」と思われる方が多いと思います。
そのように思っていただいた皆様、大正解でございます。
ただし、中には「それ、ローカル5Gでなくても・・・むしろローカル5Gではないほうがいいですよ」と進言させていただくこともございます。
無線のソリューションは、ローカル5Gの他にも、通信キャリア様が展開されているパブリックの5Gや、ご家庭で使われているWi-Fi、ローカルで使用できるLTEの地域BWA、広域に低速通信を安定的に届けるSigfox、スマートフォンで皆様が使われているBluetoothなどなど、無線というカテゴリにはたくさんのソリューションがあり、それぞれの通信には得意分野があったり、親和性の高い分野があったりします。
「そうだ!DXだ!とりあえずローカル5G使ったらなんかできるだろ!でも何ができるかよくわからん・・・」とお悩みの方も多いと思いますので、今回はローカル5GをDXで使うならどのような分野が適しているかをご紹介させていただきます。

2. ローカル5GとDXのオススメ組み合わせ

2-1. まずローカル5Gが必要かどうかを考える

まず根本にして核心部分となるのですが、DXとローカル5Gを組み合わせるときにそもそもそのDXはローカル5Gが必要ですか?ということを考えなくてはなりません。
そして、そもそもDXとは何かということを再確認してみましょう。

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Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)

(出典:総務省 令和3年 情報通信白書 第1部第2節 企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html

デジタルトランスフォーメーションとは社会の変化に対して新しい技術を利用しながら変革を図るということのようです。
ローカル5Gというのは比較的新しい技術なのでローカル5Gを使用してDXをするというのは的外れではないということになります。
では何を行っていくか、ですがローカル5Gには大きな得意分野があります。

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5Gの特徴

当社Webサイトに記載していますが、超高速、超低遅延、多数同時接続の3つがポイントとなります。この3つの特徴を「占有」できるというのが最大の特徴です。
そして「SIMを使う」という特徴があり、ある程度最初から物理的なセキュリティが担保されているシステムになるのです。
また、広域な通信エリアを作ることが得意であり、複数のエリアを作ってその中を移動するといった使用方法が得意な通信です。
逆に言うとこれらの特徴がうまく使えないDXですと、5Gでやるよりも他の通信で行ったほうがいいだろうという結論になります。

例えばですが、低速自動運転の車で地域に根差した配送&販売サービスを考えたとしましょう。
ある程度郊外で買い物に行くにも遠いなと住民の方が感じておられるようなエリアに自動で商品を届けてもらうのです。(そんなサービスを当社の親会社である京セラコミュニケーションシステムが実証実験しております・・・)
自動運転自体はその地域の変化に対応し、実際に自動運転の配送&販売サービスを行うにあたって組織なども変わっていくでしょうし正にDX!と呼べるのではないでしょうか。そして「自動運転とローカル5Gの組み合わせ」この言葉だけで非常にDX感があります。
しかし、「低速」で動く自動運転車に超低遅延や超高速化、多数同時接続がマッチするかというとそうではないと考えます。
「でも監視とかで使うんじゃない?」と考える方は多いと思いますが、ローカル5Gのスペックまで必要かどうかと聞かれるとどうでしょう。
そもそも自動で走る車ですから交通事故などを起こさないように設計されており、高精細カメラを取りつけて一人一台を常時監視するかというとそうはならないと思います。また機械がどうしても判断できない場合はおそらくですが、一旦車を止めて遠隔で動かせばいいような機構を組み込むのが、低速自動運転を行う場合一般的なのではないかなと思います。
そうなると安全を確保した上で動かすと思うのでLTEでも問題なく対応可能だろうと思います。あるいはWi-Fiやパブリック5Gでも郊外であれば問題ないと思います。
もちろん低速ではなく40~50km/h程度で走る自動運転車であれば即時対応が求められることも出てくる可能性はゼロではないだろうと思いますので、ローカル5Gの低遅延を活かした監視やデータ投入などが輝く可能性はあるだろうなとは思います。

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では、自動運転に対して遠隔運転、遠隔操作はどうでしょうか。
遠隔運転もDXと結びつくワードであると思います。
例えば、比較的都市部で重機を複数台使う工事現場で遠隔運転を使うとしましょう。
遠隔運転を行うとなるとカメラは高精細カメラを使う必要があり、複数台のカメラ動画を遠隔地に届けるとなると大容量通信は必要になると思います。
また工事現場となると周辺に人がいないか、他の重機とぶつからないかを絶えずチェックする必要があり、実操作と遠隔地の重機の動きに遅延があると事故につながる可能性もあると思いますので低遅延は必要な要件になると思います。
重機がハッキングされて勝手に動く、ということがないようにSIMを使い、広い工事現場であれば重機が動き回ることも予想されるので複数のエリアが作れる。
つまり自動運転と比べると遠隔運転のほうがローカル5Gとは親和性が高いわけですね。

上記のようにローカル5Gの得意な点を十分に使えるかということを前提に考えていただくと、ローカル5Gを使ったDXはやりやすくなると思います。
正直に書くとローカル5GよりもWi-Fiや他の無線通信のほうが価格が安く、導入難易度も低いものが多いです。
そのため、得意領域をしっかり使えるソリューションとの組み合わせをしないと損をしてしまう可能性が高いといえます。

2-2.収益化を考える

ローカル5Gがそもそも必要かどうかを考えた後は、実際に今考えているソリューションを使ってどのように収益が上げられるかを考えてみましょう。
収益を考えるにはソリューションとローカル5Gの導入、保守運用費を勘定します。
大体の方がここで一回考えが詰まります。何故ならローカル5Gにかかる金額がよくわからないからです。インターネットで調べてみても値段が載っておらず、一回打ち合わせや見学に行かなければ値段が分からないというのがほとんどかなと思います。
あるいは展示会などに行ってみて値段を聞いて、担当者がいれば教えてくれるというような場合もあると思います。どちらにせよアクションを起こさないと値段がわかりません。なかなかに不便な状況です。
ここでまた例を挙げるのですが、価格のよい例として当社のサービスである「サブスク5G」を見てみてください。値段を記載しています。

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京セラみらいエンビジョン サブスク5Gの価格

(最短3ヵ月と記載はありますが、ご相談いただければ短期間の貸出も可能です)
3ヵ月の標準価格ですが、例えば月あたりで均しても100万円以上はかかってきます。
この価格には最低限のフォローと免許申請などの費用が含まれていますが、エリア設計や工事、設備構築などは含まれていないため、最大限のフォローを見込むと月あたりでも相当な金額になります。
ここにソリューション代、人件費など加算されますので、ソリューション内容にももちろん依りますが、月で均して1,000万円程度が稼げるような仕組みでないと、導入しても結果、損をしてしまう可能性があるわけですね。
また、DXにはならないかもしれませんがローカル5Gを使ってもそれ以上の人件費の削減が見込まれるのであれば、そのソリューションはやる価値があるでしょう。
例えば工場内でフォークリフトを遠隔操縦するソリューションがあったとしてフォークリフト1台あたり100万円で遠隔操縦が搭載できますよ、というものがあったとします。
今まではフォークリフト1台につき1名の人員がいたけど、そのソリューションを使えば、1アカウントにつき3台のフォークリフトが遠隔で動かせるとしたら2名分の人件費が削減できる可能性があります。
1名あたりの人件費が月60万円としたら1年で600万円、2名ですと1年で1,200万円は削減できるわけですね。ソリューションは100万円のため残りをシステムの維持費とローカル5Gに割くことができます。遠隔操作であれば自宅からでもできるため、新たにフォークリフトオペレータを雇うとしても門戸が広くなることから人材がすぐに見つかる、つまり採用費の圧縮になる可能性もあるかもしれません。

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ローカル5Gの導入による人件費の削減イメージ(工場の例)

このようなところを考えていく必要があります。
機器選定については、以前「ローカル5Gの導入検討ってどうするの?」というコラムで、ざっくり記載しておりますので、ご興味に応じてご覧ください。
何かを顧客に提供して収益を得るのか、あるいは社内業務を削減・自動化して差額で結果としてプラスにするのか、はたまた両方なのか、様々パターンはございますが「ローカル5Gの導入は結構コストがかかる」ため、そこを回収できるかどうかがカギになります。
ベンダーによってはライセンス料が毎年かかる場合もありますし、元が高額なのでライセンスも高額になるといったケースがあります。
買取の場合ですと、規模にもよりますが最低金額で1,000万~1億円ぐらいは導入にかかると考えたほうがよいことと、そのほかライセンス料や保守費などで購入費用の15%程度が毎年必要になると想定しておくと収益化への見積りがしやすいのではないかと思います。

2-3.相性がよさそうなソリューション

普段お客様のご相談をお伺いしているとローカル5Gを導入してもうまくいくだろう、導入まで諦めずに話を続けていけるだろうということが肌感覚でわかるようになってきます。その鍵となるのが、大体「映像」を使ったソリューションを考えていらっしゃるお客様です。
映像データは容量が大きくなりやすく、また即時性が求められるソリューションも多いと思います。映像は多種多様な業界で使用するので他の業界で使用しているソリューションを持ってくるということもできることから融通が利きやすいです。
映像を撮る機器も現状ですと配線が煩わしく、例えばテレビ中継やライブ会場ですと配線の引き回しと撤収に相当な人手が必要になるとお伺いします。それらを無線化するだけでもメリットがあると多々お客様からお伺いするため、ローカル5Gと映像関係はかなり親和性があるように窺えます。
また、個人的には工場DX化や工事現場のDX化、農業など一般的に親和性があるだろうと言われている業種も然りですが、エンターテインメントとローカル5Gは親和性があるように思えます。

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エンターテインメントでのローカル5Gによるマネタイズ(例)

よく当社ウェビナーやラボに訪問いただいた際、親和性の高い例として挙げさせていただくのですが、ライブ会場のように、不特定の時期に人が集中して通信が輻輳してしまうような場所では、キャリア5Gなどは使いづらさが出てきます。Wi-Fiも回線としては心許ないという時に、スタッフが第三の通信としてローカル5Gを使うことでカメラマンの方へ大容量低遅延の通信を届け、コードレスにすることでライブでのアーティストの表現方法が広がる動きができる、プレミア感のあるライブで更なる収益を狙うということは可能だと思います。
またライブビューイングの方のみ使えるARグラスなどでグループユニットの1名にフォーカスした映像を配信することで会場に行けない方へのプレミアム配信を届けるなんていう使い方も有線だと難しいかもしれませんが無線であれば可能になる部分も出てくるのではないでしょうか。
上記は一例ですが、今までできなかった映像の扱い方ができることから、業務で人を使って監視する、教育をマンツーマンで横について行う、という分野でしたらローカル5Gが活きてくるでしょう。

3. まとめ

今回は、まだ普及したとは言い難い最先端技術のローカル5Gを元にDXを行う場合、何ができるかということについて書いてみました。
DXという言葉が生まれてからずっと命題として取り組んでこられた企業様や担当者様もいらっしゃると思います。ローカル5GをもしDXに使用しようとしていることを検討されている皆様の一助になれば幸いと考えております。
このコラムは、実際に当社のラボに足をお運びいただいたお客様とお話しさせていただく内容をもとにしており、お客様のお悩みに合わせてこのような案内を触り部分としてお話しさせていただくことも多々ございます。
「ローカル5Gを使った未来の話をしてみたいなあ」と、もし考えられているご担当者様、あるいはこのコラムを読んでそう思われたご担当者様は是非ラボにお越しください。押し売りはいたしませんのでお気軽にお越しいただければと思います(笑)
またソリューションの持ち込みと接続確認なども行うことができますので、本当にDXが実現できるのかといった確認も可能です。
ローカル5GはDX視点で見ると「まさに旬」なソリューションとなりますので、このコラムをきっかけに、ローカル5Gに興味を持っていただけますと幸いです。