目次
1. BCP対策における通信の重要性
企業や自治体にとって、災害や緊急事態への備えとして事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定は不可欠です。特に近年では、地震や台風などの甚大な自然災害が発生するなど、多様なリスクが顕在化しています。
こうした事態において、「通信手段の確保」 はBCPの要となります。
例えば2024年元日に起こった能登半島地震では、各携帯電話事業者計で最大800局を超える基地局が影響をうけ、その復旧には立ち入り困難地域をのぞいても約2週間もの期間を必要としました。インターネットや社内ネットワークが遮断されると、業務の継続が困難になるだけでなく指示系統の維持にも支障をきたします。そのため、既存の通信インフラがダウンした場合でも機能するバックアップ通信の確保が求められています。
このような課題を解決する手段として注目されているのが「ローカル5G」です。本記事では、ローカル5Gの特長を踏まえながら、主に自治体視点でのBCP対策における有効性を解説します。
2. ローカル5Gの特長とBCP対策における優位性
災害発生時にスマートフォンや携帯電話のモバイルネットワークが利用困難になる主な要因には、以下のようなものがあります。
電力供給の途絶:
・地震や台風などの影響で広範囲にわたる停電が発生すると、基地局の非常用電源が枯渇し、通信が不能になる。
バックホール回線の断絶:
・基地局自体が無事でも、光ファイバーなどのバックホール回線が寸断されると、通信ができなくなる。
基地局の物理的損傷:
・津波や強風、地震による建物の倒壊などで基地局が破壊されるケース。
通信の輻輳(ふくそう):
・災害発生直後、多くの人が一斉に安否確認のために通信を試みることでネットワークが過負荷となり、接続しづらくなる。
一方でローカル5Gは、企業や自治体が自営の5Gネットワークを構築できるシステムのため携帯通信事業者が提供する公衆5Gとは異なり、特定のエリア内で独自のネットワークを運用できるため、BCP対策の観点からも大きなメリットがあります。
以下はローカル5Gの代表的な特徴となります。
(1)通信の独立性
・公衆ネットワークが混雑・障害で利用できなくなっても、自営ネットワークなら安定した通信が可能。
・企業や自治体が主体的に管理でき、外部の影響を受けにくい。
(2)高速・大容量通信
・大規模なデータ伝送や、クラウドサービスとの円滑な接続が可能。
・災害時の映像伝送や、AI解析による状況把握などにも活用できる。
(3)低遅延でリアルタイム通信を実現
・遠隔監視やリモートオペレーションの安定運用が可能。
・例えば、工場や災害現場での遠隔操作が迅速に行える。
(4)高いセキュリティ性
・ローカル環境内で閉じたネットワークも構築できるため、外部からのサイバー攻撃リスクを低減。
・接続端末はSIMでの認証が必要な為、機密性の高いデータ通信を安全に確保できる。
これらの特長により、ローカル5Gは災害時や緊急時にだけでなく平時においても、確実な通信手段として機能する強力な通信インフラ となるのです。
3. 具体的な活用シナリオ
ローカル5GをBCP対策に活用する具体的なシナリオをいくつか紹介します。
(1)災害時の通信手段の確保
・地震や台風などの災害時、公衆ネットワークが使えなくても、ローカル5Gを活用した社内、自治体内ネットワークで業務継続が可能となります。能登半島地震の際には、各自治体から派遣された応援人員との連絡手段の確保が課題として指摘されています。ローカル5Gは特殊な端末ではなく普段使っているスマートフォンと同様の端末を使用できるので、スムーズな連携が可能となります。スマートフォンを使うので音声だけでなく、テキストメッセージ、映像、動画などの共有も容易となり、情報伝達の速度や正確性が向上することも見込まれます。また、通常は自治体とは異なる通信網を構築している、消防や警察などの組織との連携も容易となります。
・避難所でのWiFi提供や、被災地の状況把握にも応用可能です。通信事業者のネットワークが使えない状況下では、各被災者の連絡手段をどう確保するのかも課題となります。ローカル5Gのサービスエリア内であれば、ローカル5GをバックホールとしてWiFiサービスを迅速に提供可能となります。また、各自治体の庁舎から離れた場所にある避難場所と連絡がとれる環境を作っておくことは、孤立化を避ける意味で重要な視点といえます。
(2)重要インフラの遠隔監視制御
ライフラインなどのインフラ維持にもローカル5Gは有効なシステムです。ローカル5Gの特徴でもある高速大容量通信により監視映像をリアルタイムで本部に伝送でき、状況を即時判断することが可能となります。通常の監視回線を光ケーブルで構築している場合、大きな地震ではその回線が使えないことが想定されます。ローカル5Gであれば無線での接続となるので、災害時のバックアップ回線として有効であるといえます。また、能登半島地震での活用が進んだスターリンクを各重要拠点に設置すれば、更に強靭な通信網となります。5Gの低遅延特性を活かし、遠隔地からドローンを操作して被災状況の把握、救助の支援をすることも可能です。
BCP対策としてのローカル5G導入イメージ図
4. 導入を検討する際のポイント
ローカル5GをBCP対策に導入する際のポイントを整理します。
・カバレッジエリアの最適設計
どの範囲に通信エリアを確保するかを事前に設計する必要があります。自治体での導入を検討するのであれば、自治体の庁舎や支所、避難場所、水道などの重要インフラ拠点、また、消防や警察などの防災関係機関と導入について協議する必要があります。
・非常用電源の確保
ローカル5G設備を稼働させるための電源対策を検討も重要な事項です。通信事業者の基地局と同様に、電気が途絶された場合にバックアップ電源を確保する必要があります。自治体の庁舎であれば自家発電設備が準備されていることが多いと思われますが、各避難場所まで通信エリアとして広げる際は、非常時にどのように電源を確保するのかを検討しておく必要があるでよう。
・既存システムとの連携
社内ネットワークやクラウドサービスとスムーズに接続できる環境をどのように構築するのかも検討すべきです。普段から使っているシステムとローカル5Gをシームレスに接続することにより、災害などの非常時においても業務を継続することができます。どのシステムを接続してくのか、言い換えれば替えのきかないシステムはどれなのか、重要度を分けて検討が必要です。
・平時での活用を進める
ローカル5Gは災害などの非常時に使用するだけではなく、平時にもメリットを十分に活用できます。先に述べましたようにローカル5Gは非常にセキュリティの高いネットワーク構築が可能です。個人情報を多く扱う自治体サービスにおいて、普段のシステムとしてローカル5Gを使うことで更に質の高い業務運営を行うことが可能となります。非常時に重要な通信回線となるローカル5Gを普段から使い慣れておくことは重要です。
5. ローカル5Gで強靭なBCP対策を実現
ローカル5Gは、災害時や緊急時でも安定した通信環境を確保できる強力なインフラ です。自営ネットワークによる独立性、高速・低遅延通信、セキュリティの高さなど、多くのメリットを活かせば、BCP対策の強化が可能となります。
導入には一定のコストや運用のハードルがありますが、事業継続の観点から考えると、長期的なリスク軽減と安定運用のメリットは大きいと言えます。
京セラみらいエンビジョンでは、ローカル5Gをはじめとした通信ソリューションを提供し、企業・自治体のBCP対策を支援しています。ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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