海外のローカル5Gを調べてみる
(米国編①)

  • ローカル5G

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1. 米国のローカル5G

前回「海外のローカル5Gの活用分野(韓国編)」という記事を掲載しました。5G大国、韓国の後は5G通信が韓国と共にいち早くスタートした米国も今5Gをどのように扱っているのか気になります。
なので今回は「米国のローカル5G」に焦点を当てて紹介してみることにしました。

米国ではローカル5Gはどんな名前で呼ばれていると思いますか?
米国では「プライベート5G」と言います。少し日本と違いますね。日本でもプライベート5Gというサービスがありますが、日本の場合はパブリック5Gを扱っている通信キャリアが提供する企業・団体向けの5Gをプライベート5Gと呼んでいます。韓国ではイウム5Gだったので各国で読み方が変わるのは面白いですね。
皆さんは米国と聞いて何を思い浮かべますか?私にとっては、多くの人口、シリコンバレー、スポーツ、広大な工場、ハリウッド、そしてiPhoneなど、さまざまなキーワードが思い浮かびます。まず、簡単に米国について紹介したいと思います。

1-1. 米国の基本情報

米国は世界で3番目に人口が多い国で、約3億4千人の人口を有しています。また、米国の面積は約9,834,000km²で、日本の約25倍の広大な国土を持っています。これだけの大きさから、米国の重要性を感じることができます。日本の25倍の国土を持っているけど米国の通信状態はどうなると思いますか。米国の人口の97%、約3億3千人が携帯電話を使っています。米国の平均スループットは固定ブロードバンドのダウンロードスピードは215.72Mbpsになります。モバイルインターネットのダウンロードスピードは103.69Mbpsになります。日本は固定ブロードバンド170.29Mbps、モバイルスピードが47Mbpsと大きく米国と離されています(前回紹介した韓国は固定ブロードバンドが139.83Mbpsと日本優勢ですがモバイルは脅威の145.25Mbpsとさすが5G大国にふさわしい回線速度になっています)
米国の大手通信事業者の調査によるとExtended Range 5Gは1.9万mi²の範囲で約3億2.5千人をカバーします。面積を見るとさすがに西部劇で出てくるような草がコロコロ転がる平野などはカバーできていないようですが大半の人口をカバーしていることから都市部は普通に5Gが受信できる状況が想像できますね。

1-2. 米国のローカル5G

米国のワイヤレス事業を理解するためにプライベート5Gを行う米国の機関を調べてみました。
米国は商務省(DoC: Department of Commerce)で電波政策を樹立し、連邦政府用周波数は情報通信NTIAが管理します。
非連邦政府用である地域、個人および商業用周波数は国会算下の連邦通信委員会FCCが管理します。

以下の絵に簡単に2つの機関を比較してみました。

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機関 FCC
(The Federal Communications Commission)
NTIA
(National Telecommunications and Information Administration)
IRAC
(Interdepartmental Radio Advisory Committee)
機関
簡易説明
米国の通信法及び規定を執行する責任を負う機関 米国通信産業の規制および国家の経済的技術発展に対する通信政策を確立する機関 NTIAの周波数スペクトラムの割り当ておよび管理に関する助言を行う機関
役割 非連邦政府(民間、州政府、地方政府を含む)が使用する周波数の管理や商業、放送、産業用途で使用される電波の管理 国防、連邦政府が使用する周波数管理政策を担当 連邦政府無線局の周波数割り当て業務、周波数分配、管理および利用に関する政策を開発し、プログラム手続きおよび技術支援などを担当

FCCはThe Federal Communications Commissionの略で、連邦通信委員会を意味します。FCCは米国50州全体、コロンビア特別区、米国領土でラジオ、テレビ、電線、衛星およびケーブルを通じた国際通信を管理します。

他の機関としては米国商務省の一部である国家電気通信情報管理局(NTIA)があります。NTIAは米国通信産業の規制及び国家の経済的技術発展に対する通信政策を樹立する機関です。主にブロードバンドインターネットのアクセスと普及の促進、周波数の利用の拡大、公共安全通信の推進、そしてインターネットがイノベーションと経済成長のエンジンとして維持されることに焦点を当てています。

FCCとNTIAは規則に関する協議を行い、NTIAは連邦周波数の使用に関するIRACの助言を受けます。

現在、FCCの認可を受けたSAS管理者は5社(Amdocs、Federated Wireless、Google、Sony、Key Bridge)が、ESC管理者は4社(CommScope、Federated Wireless、Google、Key Bridge)が存在しています。

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1-3. 米国の周波数分配方法

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米国では、周波数ライセンスが公共ネットワークやプライベートネットワークの両方で利用可能な地域ライセンスとして割り当てられます。日本のローカル5Gに似た制度として、市民ブロードバンド無線サービス(CBRS)が挙げられます。

CBRS(Citizens Broadband Radio Service)は、2015年から海軍のレーダーなどが使用していた3.5GHz帯を商業利用と共有可能な帯域として再割り当てし、企業などはこれをプライベート5Gネットワークの構築に利用できます。現在海軍レーダーシステムや衛星地上通信で使用されている既存のWi-Fiバンド(2.4 GHzと5 GHz)の中間に存在しています。

CBRS帯の利用優先権は、海軍などの既存ユーザー、PAL取得者、そしてGAAユーザーの順に与えられます。特に、3550~3700 MHz帯域で作動する米海軍レーダーシステムは、いつも最優先で使われます。SASは、FCCの商用ライセンスデータベースや海軍のレーダーを検知する電波環境検知機能(ESC)システムからの情報をもとに、干渉を最小限に抑えながら周波数を動的に割り当てます。これらのユーザー間の周波数共有は、SASが管理します。そして、プログラマーが特定のプラットフォームに囚われることなく、必要な作業を簡単に行えるよう支援し、リモートコンピューティングも可能にします。

2.ニューヨークのローカル5G

米国は50の州から成る国です。米国の各州は、1つの国家と同様の役割を果たし、これらの州が連邦制を形成して全体の米国を動かしています。その為、 一つ一つの州は大きく各州に特色があり環境や産業も多岐にわたる為、各州を一緒くたに紹介するわけにもいきません。
そこで今回は、米国の代表的な都市の一つであるニューヨークのローカル5Gについて紹介したいと思います。

2-1. ニューヨークのプライベート5G

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まず、ニューヨークについて簡単に調べましょう。ニューヨーク州は米国東部にある州で、ニューヨーク市を中心としています。 人口密度が高く経済的に活発な地域としてよく知られており、主要な都市としてはニューヨーク市の他にもバッファロー、アルバニー、ロングアイランドなどがあります。 ニューヨーク州は金融、メディア、文化、科学および技術分野で世界的に有名な企業が多く位置し、経済的にも重要な役割を果たします。
このようなニューヨーク州で導入するローカル5Gの分野はどんなものか、今回は日常生活の近くで活用されているローカル5Gについてご紹介したいと思います。

2-2. ニューヨークの5Gのユースケース

まずプライベート5Gの前にパブリック5Gの動きも見てみましょう。ニューヨークは公共交通機関が発達した都市の一つです。1年間のニューヨーク地下鉄の利用者数(2022年基準)は約1億人です。 昨今日本でもユーザーが過密しているエリアでは速度低下等の問題が発生していますが、ニューヨークの地下鉄はどうでしょうか。
昨年、筆者がニューヨーク旅行をした時、ニューヨークの地下鉄を毎日利用しましたが、Wi-Fi通信が切れる時がかなり多かったです。1億人も利用者がいて通信設備をなぜ整えないのか、低速でも使用できるレベルにさえなっていないとなると日本に住んでいる私たちからすると疑問に思ってしまいますね。

その理由は、ニューヨーク地下鉄の歴史を見るとわかります。 ニューヨーク地下鉄は1904年度に完工した老朽化した施設だからです。地下鉄を改善するには、まず膨大な資金が必要です。また、日本の地下鉄がメンテナンス時間を持つのに対して、ニューヨークの地下鉄は24時間運行する特殊性を持っているため、リノベーションは容易な作業ではありません。
この124年以上運営した電車は補修をすることが2000年代に入ってから始まりました。ニューヨーク市民にはデータ通信がつながっていない状態が当たり前だと思ったかもしれません。
その為、米国の電気通信会社であるTransit Wirelessはニューヨークの地下鉄のワイヤレス接続プロジェクトを実施する予定です。Transit Wirelessは、全418トラックマイル、672トラック-キロメートルに及ぶ地下鉄全体に5Gインフラ、主にDAS(分散型アンテナシステム)を設置しています。この5Gファイバーネットワークは、1日あたり1000万人以上の利用者を収容し、地下鉄システム全体でシームレスな5Gセルカバレッジを確保します。

2-3. スポーツでのプライベート5G

プライベート5Gの急速な普及は、スポーツ・エンターテイメント界にも大きな変革をもたらしています。その最新の例が、米通信大手のベライゾンとNHL(ナショナルホッケーリーグ)とのスポンサーシップ契約です。この契約により、ベライゾンはNHLの公式5Gパートナーになりました。

FCCは無線接続の需要が急激に増加する中で、無線接続性の需要に対処するために、スペクトルをオークションにかけてきました。スペクトラムの購入は通信業界の成長と直結しています。そのため、多くの通信事業者がオークションに参加します。ベライゾンは、低帯域および中帯域スペクトルで合計295 MHz、高帯域スペクトルで合計1,741 MHzのライセンスを保有しています。

この取り組みの一環として、ベライゾンは既に一部のNHLアリーナにおいてプライベート5G網を試験的に導入しています。この計画の目的は、より多くのアリーナにおいてプライベート5G網を展開し、試合運営やファン体験を向上させることです。具体的には、審判のリプレイレビューやビデオコーチング、コーチとの通信など、革新的なソリューションが導入されています。プロホッケービジネスはプライベート5Gを通じて運営面や試合中の効率、そしてファンの推し活に関して肯定的な変化をもたらすと思います。

こうした取り組みは、スポーツ界全体において技術革新とエンターテイメントの融合を促進しており、ファンにとってもより豊かな体験を提供することが期待されます。今後も、5G技術がスポーツイベントにおける革新のキープレイヤーとして、ますます注目されることでしょう。

3. まとめ

今回は米国のローカル5Gについて書いてみました。以前のコラムでご紹介した例とは異なり、より日常生活で発見されるパブリック5G、ローカル5Gについて調べました。
このように様々なシチュエーションで導入できるローカル5Gに興味がございましたら、当社のまちづくりラボにお越しいただき、実際のローカル5G機器でデモンストレーションなどをお見せしながら、ご興味のある部分についてお話させていただければと思います。