海外ローカル5Gの活用分野
(韓国編②)

  • ローカル5G

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1.韓国ローカル5Gのおさらい

1-1.韓国のローカル5Gとは

先月「海外のローカル5Gを調べてみる(韓国編)」という記事を掲載しました。韓国の海外版ローカル5Gに焦点を当てて記載しましたが、今回は第2弾としてどのような活用事例があるかという部分についてさらにご紹介していきたいと思います。

その前に韓国のローカル5Gを日本と比較する形でざっとおさらいしていきたいと思います。日本のローカル5Gは4.6~4.8GHz及び28.329.1GHz(Sub6mmW)を使用して特定空間(建物、施設、場所)で企業、団体が導入しようとする最先端サービスを提供できる独自ネットワークになります。つまり公共団体や民間企業問わず導入可能であるシステムです。

対して韓国のローカル5G(イウム5G、이음5G)は4.7GHz100MHz幅、28GHz600MHzを使用しており、現在はSub6の運用が多くなっています。サービスについて同様のものを使用していますが、申請方法が民間企業と公共団体で分けられています。使用している機器は同様かつシステムも3GPP規格に沿ったものが使用されているので、主に申請方法や使用周波数が変わるということですね。

1-2.使用サービスの違い

日本の現状ではローカル5Gの使用用途として、スマート工場・スマート農場といった広域な土地をカバーする無線インフラ用途として、製造業・農業向けに5G導入が進んでいます。他にも低遅延の無線通信を活かしたロボット自動運転、大容量を活かした映像伝送システム、同時多接続を活かしたイベント関係での使用例が挙げられます。韓国では以前の記事で「ローカル5G基盤のサービスを提供するために製造業、ヘルスケア、国防、エネルギー、物流など様々な分野で関連ビジネスを進めています。」と記載をしました。

製造業というのは日本と同様の為、世界的に見てもローカル5Gとの親和性は高いのだろうと想像できます。
その他の分野はまだ日本ではあまり聞かないところなので、用途は日本も見習うところがあるのかなという風に思います。

2.韓国の物流業で投入しているローカル5G

2-1.韓国の2次・3次産業におけるローカル5Gの必要性

韓国は5G大国として世界で有名です。国のトラフィックの7割程度が5Gのトラフィックだ、なんていう話も聞くぐらい5G先進国となっています。そして韓国政府は5Gに力を入れています。

まず、韓国政府がなぜローカル5Gの導入を積極的に推進しているのかについて簡単に説明いたします。製造業の割合と韓国の5G産業の現状に注目しなければなりません。韓国はGDPにおける製造業の割合が30%近くに達するほど、2次・3次産業の割合が高い国です。製造業は特に通信インフラの技術が重要であり、ローカル5Gを通じて既存の無線ネットワーク通信が持つ限界点を克服できるため、韓国はローカル5Gの導入を積極的に支援しています。また、韓国の5G産業を見ると、5G加入者数は20222月基準で2200万人を超え、2019年に世界で初めて5Gスマートフォンを開通することにより5G産業を迅速に進めてきました。

続いて、韓国の政府は世界最高のデジタル競争力を確保し、様々な産業分野に適用され、輸出と雇用を促進するために、積極的に公共分野でローカル5G実証事業を推進し、これを基盤に5G融合サービスが拡散されるように積極的に支援しています。具体的には、韓国は2022年に480億ウォンを投資して11のローカル5Gの融合サービスを支援する計画を発表し公共医療、物流、安全、航空、エネルギーのような公共分野でMEC(Mobile Edge Computing)基盤の5G融合サービスモデルを毎年5つ以上発掘して5G産業生態系を造成しています。 また、民間分野では産業的波及効果が大きいと予想される製造、民間の医療、文化、教育の分野で80億ウォン相当の投資を通じてローカル5Gのサービスを活性化しています。このような様相を見ると、韓国の政府はローカル5Gを重要視していることがわかります。

2-2 韓国の物流業の現状

今回のローカル5G導入例は物流ビジネスで活用したローカル5Gについて調べてみました。製造業と物流業は日本でも同じような現象が起きていますが韓国でも労働力不足が最も深刻な業界に該当します。地方人口の減少、肉体的な労働環境、地方勤務の忌避などの原因で、物流業に従事する人材が減少しています。また、物流業界は2020年の新型コロナウイルスの影響を受けており、韓国では物流業界の成長に繋がりました。これは外出があまり出来ない環境になった為オンラインで物品を注文する人が増えたからです。しかし、同時に宅配便関連の労働者の業務量が増えて問題になりました。日本も同様の事象が起きているので想像しやすいことだと思います。この問題を解決するためにローカル5Gを導入しスマート物流の自動化を進める企業が増えています。

次は韓国のローカル5Gを導入した企業を紹介したいと思います。

2-3.LG U+

LG U+は20238月に韓国の文化コンテンツプラットフォーム企業であるyes24、有線、無線通信ネットワーク専門企業であるQubicom(キュービコム)と一緒にローカル5G基盤のスマート物流センターを構築する計画を発表しました。yes24が運営している京畿道(キョンギド)の物流センターでローカル5G基盤のスマート物流センターを構築することに参加してローカル5Gの設計や構築をサポートした計画です。また、yes24の他の物流センターをローカル5G基盤に構築する予定です。商品の保管とお客様の注文による出荷、配送、在庫管理までワンストップで管理できる物流センターになります。また、自律走行を通じてモノを運送する自動化ロボットを開発する予定で、ここからスマート物流センターのモーターデータをリアルタイムで送信、収集、分析することが可能です。

2-4.CJLogisticsとCJOliveNetworks

CJLogisticsはCJOliveNetworksとコラボレーションして新しくオープンする 利川(イチョン)のフルフィルメントセンターの全体空間をローカル5G環境に構築しました。Sub6帯を利用します。無線ネットワークの速度は効率化なども含めWi-Fiと比べて約1000倍速くなり物流センターの生産性を向上します。AGVの自律運転や、作業者が行う、バーコード・スキャン、商品ピッキング作業、入出力管理に使うPDAPersonal Digital Assistant)やタブレットPCなどの無線端末、それらの機械にローカル5Gを適用して作業速度と生産性を向上します。その結果、20%以上のコスト削減が見込まれます。

2-5 KTと現代重工業

KTと現代重工は、KTが持つ5G無線・ビックデータ・AIの技術と、現代重工が持つロボット開発技術を融合した無人のフォークリフトを開発しました。搭載された3D LiDARセンサーによる屋内測位で生成されたデータと立体地図情報を、5Gの大容量通信を利用してクラウド側に転送し、そのデータを基にしたAR技術を活用してクラウド上で車体の遠隔コントロールが可能になっています。また、緊急事態発生時には、音声で緊急コントロールが可能で、例えば車体の周囲で誰かが「停止」と言うと、自動で停止します。更に、フォークリフトの周辺状況から危険を自動認識した際には、車体の停止を行うと同時に管理室に報告することが可能です。

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(出典):[KT Enterprise] (BizTech Trend)3호(5G와 AI가 만드는 스마트 물류) (1) 5ページ

3.ローカル5Gのメリットと未来

3-1. ローカル5Gのメリット

ローカル5G導入のメリットとしてはヒューマンエラー(Human error)の最小化、企業の生産性向上などが挙げられていて、物流事業者の場合は物流の効率性を高めて顧客満足度の向上に繋げています。 企業における生産現場の環境改善および労働者の安全確保といった事例をはじめ、DXのメインインフラとして企業、産業、工場でのセキュリティ強化、ネットワークリソースについてのコントロール強化などのメリットがあります。

3-2. ローカル5Gの未来

2033年まで5Gはグローバル的に1339億ドルぐらいの経済効果を持っていると予想しています。他にも2230万人の雇用創出機械を出すと予想されていました為、ローカル5Gの未来は明るく成長すると考えています。

今回は韓国の物流業界で活用されているローカル5Gについて、簡単にまとめてみました。導入が先行する国の状況を見て、皆さまのビジネスプランへお役に立てれば幸いです。

なお、ローカル5G導入を計画する企業様向けに、京セラみらいエンビジョンでは機器を貸出しする「サブスク5G」というサービスを行っております。ローカル5G導入検討の際には是非ご一考いただければと思います。