海外のローカル5Gを調べてみる
(韓国編①)

  • ローカル5G

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1. 他国のローカル5Gのマーケット

2023年12月現在、少しずつ日本の各企業が導入を検討・実施しているローカル5Gですが、他の国ではどんな状況かも気になりますね。
今回は国際社会のローカル5Gの導入事例と現状を調べたいと思います。
第一弾として今回はローカル5Gを展開している様々な国の中で、情報が手に入りやすかった韓国のローカル5Gについてご紹介したいと思います。

ローカル5Gの市場規模は世界的に見て2026年度、約6679億ドルまで成長すると予想されています。
韓国では2035年までローカル5G関連事業を通じて約3兆8000億ウォンの生産、2280万人分のタスクを自動化できるとみています。
韓国、日本でも今後は市場規模が広がりローカル5Gを使用するのが当たり前になってくる世の中になるかもしれませんね。
また韓国は早稲田大学電子政府自治体研究所「第18回早稲田大学世界デジタル政府ランキング 2023」にてネットワーク・インフラの充実度が3位と5G普及率が元々非常に高い国であることと、海を挟んで隣の国で国の距離も近いので見習うべき部分は非常に多い国だと言えます。

見習うべき部分をまとめてみましたので是非、記事の全文を読んでみてください。

2. 韓国のローカル5Gの現況

2-1. 韓国のローカル5G

韓国ではローカル5Gはどんな名前で呼ばれていると思いますか?
韓国では'イウム(이음)5G'と言います。イウムとは日本語で「継ぎ目」を意味する単語です。

韓国の科学技術情報通信部(韓国の電波管理を行う行政機関)はローカル5Gの全国利用拡大のために支援を行っており、2023年5月2日のデータではローカル5Gの周波数を割り当てられた法人が11企業であったのに対して、10月11日のデータでは企業数が増え14企業に周波数割り当てが行われていました。
周波数割り当てというと「韓国はローカル5Gを使用する帯域を企業毎に細分化して割り振るの?」と思う方がいるかもしれませんが、日本でいうところの免許取得を行った企業のように考えてもらえるとわかりやすいと思います。

< ローカル5Gの周波数指定状況(2023年10月11日基準) >

割り当て(14)

NAVERCLOUD(21年12月)、LGCNS (22年6月), SKネットワークサービス(22年5月、11月)、ネイブルコミュニケーション(22年8月、23年4月)、CJオリーブネットワークス(22年8月、23年4月)、KTMOS北部(22年10月、23年2月8月、9月)、セジョンテレコム(22年10月、23年10月)、ウィズコア(22年10月、23年2月)、ニュージェンス(22年11月、23年9月)、ヒョンダイオートエバー(23年4月)、LS ELECTRIC(23年4月)、LG電子(23年7月、23年10月)、メガゾンクラウド(23年7月)、PoscoDX(23年9月)

指定(11)

海軍(22年10月、23年6月)、韓国電力公社(22年10月、23年2月)、KT(22年10月)、韓国水資源公社(22年10月)、UANGEL(22年11月)、韓国水力原子力(22年11月、23年2月)、韓国航空宇宙(22年12月)、行政安全部(政府世宗庁舎)(22年12月)、CAMTIC総合技術院23年2月、クンテック(23年6月)、韓国電子通信研究院(23年10月)

韓国の電波法では特定人に特定周波数を利用できるようにする方法で割り当て、指定、使用承認など3つの制度があります。

周波数割り当ては通信事業者に特定の帯域および帯域幅の周波数を利用する権利を付与して事業を行うことを意味しています。周波数割り当て業者として選任されると、その帯域の周波数を一定期間、排他的に使用可能です。
表の下段にある指定は無線局が使用可能である周波数を放送通信委員会が指定するものを意味します。周波数の利用者は四半期ごとに電波使用料のみ支払えば使用が可能となっています。
何が違うの?とわかりにくくなっていますが端的に言うと日本でいう免許をどこが発行するかによって変わります。
どちらも使用を行う際は科学技術情報通信部に申し込みを行うのですが、使用目的が自営の場合は放送通信委員会が処理を行い「指定」となります。
商用の場合はそのまま科学技術情報通信部が処理を行い「割り当て」となります。
指定に公的機関が多いのはそういう理由だからですね。

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2-2. 韓国のローカル5Gのトレンド

韓国ではローカル5G基盤のサービスを提供するために製造業、ヘルスケア、国防、エネルギー、物流など様々な分野で関連ビジネスを進めています。
2-1でご紹介した企業群で
製造業は、PoscoDX、LG電子、SKネットワークサービス、LS ELECTRIC、ヒョンダイオートエバー、セジョンテレコム、韓国航空宇宙、ウィズコア(中小企業)、ニュージェンス(中小企業) ヘルスケアではネイブルコミュニケーション、KTMOS北部(中小企業)などがあります。
国防では海軍、KT、行政安全部、韓国電子通信研究院、CAMTIC総合技術院(中小企業)エネルギーは韓国電力公社、韓国水資源公社、物流はNAVERCLOUD、LGCNS、SKネットワークサービス、CJオリーブネットワークス、メガゾンクラウドがローカル5Gを使ってビジネスを展開しています。
一部日本でいう中小企業がローカル5Gを使用していますが全体的に大企業がローカル5Gを使用しているようです。

日本でも製造業やエネルギー関連に関してはローカル5G導入が進んでいますね。
韓国と日本の違いは、日本ではメディア系業種でローカル5Gの動きが増えてきていますが、韓国ではそういった動きがあまり見られず、逆に日本であまり見られないヘルスケアにローカル5Gを使っているというところがポイントになると思います。

2-3. ユースケース

①NAVER

韓国では初めてローカル5G事業者として立ち上がったNAVERですが、サムスン電子とローカル5GやMEC(Mobile Edge Computing)を構築しています。自動運転ロボットサービスを提供しながらAI、ロボット、ローカル5Gなど先端技術が融合したサービスを提供しようとしています。

<サービスの重要内容>

会社: NAVER

5Gブレインレスロボット

ローカル5Gを通じてロボットとコントロールクラウドがつながって運用する自動運転ロボットになります。室内測位, モノ認識, 回避コントロールなど高度な処理をローカル5Gを通じてクラウドで行います。

高度な処理をクラウドで行うのでロボットの処理装置を少なくすることで、製造コストが低くなり、バッテリーの消耗が少なくなります。そのためメンテナンスやバッテリー寿命などを考慮すると普通のロボットより長期間使うことが可能となっています。

現在、社屋入居社員を対象に、5Gブレインレスロボットが宅配便、弁当、カフェドリンクを配送しています。

② KT MOS

KT MOSは4.7(4.72GHz~4.82GHz)と28GHzのローカル5Gの周波数をサムスンソウル病院にサムスン電子のローカル5G設備でローカル5Gを2022年12月に構築しました。ローカル5G基盤の遠隔協力手術とリアルタイム遠隔手術教育サービスを提供しています。手術室で執刀医が進めている手術現場をARガラスや、内視鏡、360度のカメラで撮影した映像をローカル5Gを通じて本館通信室の医療教育プラットフォームにリアルタイムで送信します。また、教授室では専門医がノートパソコンで映像を見て手術現場に対してリアルタイムで指示し、セミナー室にいる専攻医たちは執刀医の手術画面と専門医の指導内容を同時にリアルタイムで学習します。

3. 今後の韓国のローカル

韓国は1,320億ドル程度の市場を創出することが可能であると予測されています。その中で工業用ローカル5Gネットワークは、事業の持続可能性や俊敏性の向上などの事業的な成果を実現するのに役立つと考えています。今後、産業現場にAGV・AMRなどモビリティ機器が増えるとの予想もあり、そういった機械が増えれば通信の安定性や低遅延を求めローカル5Gの通信インフラもさらに拡大すると予想しています。また、産業競争力の確保とともに製造企業内の生産・品質基準に適合し、AI、メタバースのようなレベル高い技術力を求められるサービスを実現するためには、産業現場内の通信インフラの側面で高度化がなされなければならないため、ローカル5G関連市場も成長していくと思います。

今回は韓国のローカル5G事情について概要ですがまとめてみました。
韓国は5Gへの着手が世界でもかなり早く、加入者や通信速度自体もトップクラスのまさに5G先進国ともいえる国となっています。
最先端を行く国の状況を見て何か皆様のローカル5G導入計画のお役に立てれば幸いです。

またローカル5G導入計画について京セラみらいエンビジョンでは機器を貸出しする「サブスク5G」というサービスを行っております。
是非検討の際にはご一考いただければと思います。