ローカル5Gのスループットを計算してみる

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1. スループットを計算する意味

スループットとはコンピュータやネットワーク機器が単位時間あたりに処理できるデータ量のことを指します。単位はbps(ビットパーセカンド)で1秒あたり何bitを送ることが出来るかを示します。
よく家電量販店で〇〇光!1Gbps!みたいな光回線の宣伝をしていたりと普段の生活でも目にする単位です。

ではローカル5Gでスループットを計算する意味ですが、非常に単純でスループットがどの程度になるかで扱えるサービスが違ってくる、つまり取り扱う予定のローカル5Gシステムに今考えているサービスが乗せられるかどうかの指標の一つとして使える数字なのです。
よく5Gを使えば低遅延で大容量4K8Kの動画が送受信できる!なんて謳い文句を目にしますが、4Kの動画をいくつ同時に取り扱えるのか、というところまで言及しているシステムはありません。
それは当たり前で無圧縮なのかどのようなエンコードとデコードをするのか、どのようなシステムで取り扱いたいのか等々複数条件があり皆さんの希望サービス内容が千差万別だからですね。
自社にローカル5Gを導入するとなった場合、先に書いた通り同時に取り扱える数を他のサービス内容を加味して自分である程度考えとかなければなりません。
なのでスループットの計算、ないしは情報を入手は導入時に必ず行わなければなりません。

2. 実際に計算してみる

2-1. 公式に当てはめる

では実際にスループットを計算してみましょう。
計算式は3GPP(3GPP TS 38.306)を確認すると下記の式が出てきました。

local5g_0006_01.png

学生時代に数学が苦手だった人はもうこの式を見るだけでかなり頭がいたくなることでしょう。
この式だと色々見づらいと思うのでもっと簡単に総務省の資料に載っていた式を参考にしましょう。

local5g_0006_02.png

(出典)総務省 新世代モバイル通信システム委員会
情報通信審議会情報通信技術分科会新世代モバイル通信システム委員会報告概要(案) 資料9-1
「新世代モバイル通信システムに関する技術的条件」のうち「第5世代移動通信システム(5G)の技術的条件」

上記の式も計算が難しそうですが1個1個見ていけば難しいものではありません。
よく見るとほとんどが掛け算か割り算で完結します。(一部累乗が出てきますが)
Σやらを使うより全然簡単ですね。

では京セラみらいエンビジョンで扱っているQCT製のローカル5GシステムでDLのスループットを計算してみます。
細かい数値は飛ばして結果だけ記載すると964.39Mbpsと出ました。
(f=0.75、RDL/ULを準同期設定、比率5.5:4.5にて計算)
机上の計算としてはざっくり900Mbpsは出るでしょうということですね。

2-2. 計算のポイント

計算を行うにあたって心得ておくポイントがあります。
まずは設定で計算に使う数字が変わってしまうポイントが含まれている点です。
例えば変調方式(NMODと記載のある部分です)ですが、機器によっては変更が可能です。

QCT製のローカル5GシステムはDLは64QAMと256QAMが選択可能で普段は256QAMにしていますが、場所や状況によって64QAMを選択する場合もあるでしょう。
そういった時に機器が256QAMまで対応してるから256QAMで計算しよう、と考えてしまうと理論値と実際の値の乖離が激しくなってしまいます。
設定で変えられる部分が計算式に含まれている場合は機器を最大値が出るように合わせた設定と現状の設定に合わせた設定と2つの計算結果を持っておくと機器選定がしやすくなります。

そして、計算で出た値はあくまで「理論値」だということを念頭に置くことが重要です。
理論値は基本的にほぼ出ない数字です。なぜ理論値が出ないのかというのは様々な理由があります。
理由の例を1つ挙げると、ローカル5Gを工場に設置したとします。
工場には様々な機械があり電気が流れています。この機械から電磁波が多少なりとも発生する為、ローカル5Gの電波が干渉を受ける可能性があります。また人体や金属製の遮蔽物があれば電波の電力自体が弱まって信号自体が一部届きにくくなるということもあるでしょう。
理論値はそういった邪魔なものを計算にまったく入れていない値である為、実際に出る数値とは乖離があります。
私たちが扱っているQCT製のローカル5Gシステムは理論値でざっくり900Mbpsと記載しましたが、京セラみらいエンビジョンのラボで実験を行うとざっくり700Mbpsという数値に落ち着きます。

local5g_0006_03.png

機器によってはラボで理論値に近い数値を出せるものもあるかもしれませんが、実環境になると数値は下がるだろうと予想しておいたほうがいいかもしれません。
なのでポイントとして「理論値を実測スループットが上回ることはない」と考え、理論値以下の値でも問題なく動くシステムを検討する、というのがいいと思います。

3. まとめ

ローカル5Gは機器自体が高価なもので、導入にいたるまで色々なハードルがあります。
ソリューションがすでにあって、効果的に動かすために5Gを検討する場合は是非一度スループットの計算を行ってみてください。
京セラみらいエンビジョンのラボであれば実際に通信をしてDL/ULスループットがどのぐらい出るのか確認できるので、お気軽にお声がけください!
またローカル5Gの貸出も行っております。
ソリューションを実際に接続して試すことも可能なのでご興味ございましたら是非ご連絡ください!