1. 増加するクマ被害とその背景
近年、日本各地でクマによる人身被害や農作物被害が増加しています。
環境省のデータ※によると、2023年度の人身被害件数は197件、被害人数は218人(うち死亡6人)となり、2006年度以降で最多となっています。熊の活動期間である春から秋まで被害は発生しており、秋が最も多く発生しています。熊の個体数の増加傾向も確認されており、人的被害の発生増加はクマと人間の生活圏が重なるケースが増えていることを示しています。
※参照元 : 環境省 クマ類の生息状況、被害状況等について
2. クマとの共生の重要性
クマは人的被害や経済的被害の視点では駆除すべき害獣ではありますが、視点を変えるとクマは森林生態系の重要な一員であり、単なる駆除ではなく「共生」の視点も必要です。クマは種子散布や生態系のバランス維持に寄与し、一定の管理の下であれば自然観光の魅力として地域活性化にもつながります。しかし、人口減少や高齢化に伴う里山管理の放棄、狩猟者の減少などにより、クマと人間の生活圏が重なるケースが増えています。そのため、科学的管理方針に基づく共生策―ゾーニングや広域モニタリング―が不可欠とされています。
3. AIと通信技術によるクマ対策の現状
現在、多くの自治体ではAIカメラと通信技術を組み合わせたクマ検知システムを導入しています。これにより、クマの出没をリアルタイムで把握し、住民や自治体に迅速に通知することが可能です。
◆代表的な実例
富山市「Bアラート」 : AIカメラでクマを識別すると、防災行政無線で住民に即時通知。従来より30分以上早く警戒を呼びかけられる。
出典 : 株式会社ほくつう「AIカメラ防災行政無線連携システム開発等業務委託(https://www.hokutsu.co.jp/works/900/)」
国営越後丘陵公園事務所 : 園内に設置されたカメラの画像をクラウドに送信し、AIが熊を判定。検知時は職員へメール通知、必要に応じて園内の閉鎖措置を実施。
出典 : 国土交通省北陸地方整備局事業研究発表会(Web)
「国営越後丘陵公園におけるデジタル技術を活用したクマ侵入対策システムの導入について」
これらのシステムにより、クマ被害の早期発見や迅速対応が可能となっています。
4. 広域対応への補完としてのローカル5G
クマ出没は都市近郊だけでなく、山間部や里山などキャリア網の届きにくい地域にも及びます。こうした地域では、既存のAI×通信システムだけでは十分な情報伝達が難しい場合があります。
そこで、ローカル5Gの導入が注目されています。ローカル5Gは自治体や地域が独自に構築・運用できる通信ネットワークで、圏外地域でも安定した通信を実現可能です。AIカメラやセンサーと組み合わせることで、既存システムを補完し、より広域でリアルタイムなクマ監視が可能になります。
・ 山間部・農村部でもクマの出没情報を即時収集
・ 住民や関係者への迅速通知を実現
・ 地域主導で安全インフラを整備可能
このように、ローカル5Gはクマ対策の適用範囲を広げ、地域全体での安全確保と共生の実現を後押しします。
5. 通信技術と地域連携が生む未来
AIと通信技術の融合は、クマ被害の未然防止だけでなく、人と自然の共生という社会課題への新しいアプローチを提供します。既存のAI×キャリア網システムを基盤とし、ローカル5Gを補完的に導入することで、地域の安全性を向上させることが可能です。
今後は、自治体・住民・企業が連携し、通信技術を活用したクマ対策を全国的に展開することで、より安全で持続可能な共生社会を目指すことが期待されています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
京セラみらいエンビジョンまちづくりラボ

京セみらいエンビジョンのラボでは、ローカル5Gネットワークを体感いただけます。 ラボ内には、Wi-Fi6の環境も構築していますので、ローカル5GとWi-Fi6の違いを同時に体感していただくことが出来ます。
問い合わせ