2023年1月に停波となった、公衆PHS。停波に伴い、従来PHSを利用していた業界では業務の継続性や代替となる通信手段を検討する必要が発生しました。メーカーの保守サービス及び故障した際の交換も難しくなってきております。
今回は2024年12月12日(木)に開催した「 老朽化したPHSから次世代のsXGPへ!高い通話品質とスマホの利便性で情報共有を円滑にサポート」と題したウェビナーの内容をご紹介いたします。
PHSに代わるsXGPとは
PHSは公衆PHSは既に2023年3月で終了を迎え、構内PHSについても当面の間は使える状態ではありますが、メーカーもPHSの製造や資料用途の展開に見込みはなく、今後構内PHSの運営、利用は難しくなってきます。そのため、このPHSに代わる新しいシステムが必要になってきました。現在使用している構内PHSや「スプリアス」といわれる電波規格が古い場合、将来的に使用が制限されます。もし規制開始後に規制対象の構内PHSを使用すると、罰則や罰金の対象となります。そのため、PHSの利用を継続するために定められた期限までに新スプリアス規格へ移行する必要があります。また、PHSではなく携帯電話やスマートフォンなど、ほかの通信方法に乗り換えるのもひとつの方法です。
その中で、医療機関や介護業界でPHSに変わる通信手段として期待されているのが、スマートフォンです。以前は電波の強さから医療機器に影響を与えるとされていましたが、近年のスマートフォンは性能が向上しており、安全性の問題もクリアしています。病院や介護施設でのスマートフォン活用には、多くのメリットがあります。例えば、電子カルテをスマートフォンから利用したり、全員で共有したい情報をチャットで一斉送信したりすることが可能です。そのため、スマートフォンをPHSの代替として導入する施設も増えています。
スマートフォン以外にもPHSの代替として利用できる通信手段はいくつかあります。
そこで新たな規格として、sXGPという新技術を使ったサービスが現在着目されています。sXGPは(シェアードエクステンデッドグローバルプラットフォーム)の略でPHSの周波数帯と同じ1.9G帯の周波数帯域を利用したLTE通信の為干渉を受けにくく、Wi-Fiよりも電波の回り込みも優秀です。
sXGPの特徴としてはSIMを利用したLTE通信でありながら、免許申請が不要。お手軽で低価格かつ、高セキュリティのプライベートネットワークが構築できるというところが最大の特徴になります。LTEの技術や製品を使ってこれまで構内PHSでできていたことの多くをカバーし、かつ、IoTなど新しい分野での応用も視野にいれた規格となっています。LTE技術、最新世代のPHSに組み込むことで、周波数利用効率を向上させ、また、将来のコンポーネントといった部品調達、技術の転用、さらにエコシステムの共有を行うことで、息の長い自営方式無線規格とできることが、このsXGPが標準化、製品化された場合の大きなメリットとなっております
sXGPはPHS基地局から性能がグレードアップしており、利用価値が大きく向上しております。
大きな進歩として端末がスマホになります。それにより、スマホの機能が利用できるようになります。グループチャットであったり、写真やファイルの共有も可能になります。また、PHSではできなかったアプリの追加ができるようになりますので、電子カルテへの入力や、ナースコールとの連携、バーコードリーダーになったり、ラインの監視も可能となります。まさに、1台何役にもなれる潜在能力を秘めております。
Wi-Fiとの比較
sXGPを説明させていただく上で、Wi-Fiと何が違うの?と聞かれることがあります。

Wi-Fiが有効なシーンは、固定した場所で常に通信をする環境が望ましいシチュエーションとなります。常に高速通信ができ、社内サーバーへアクセスできる環境でオフィスでの利用に向いていると思います。
一方、sXGPは、スマホ及びタブレットで移動しながら確認作業などをする、現場作業向けの無線ソリューションとなります。特筆するのは、基地局から基地局に切り替わることができますので移動しながら、常によりよい電波環境を保持しながら、作業に対応出来ます。
Wi-Fiでの電話となりますと、VoIPとなります。業務やプライベートで多く利用されているとおもいますが、SNSを使った電話は音が途切れたり聞きにくかったりされないでしょうか。クリアな通話環境が必要な場所にはVoLTEが利用できるsXGPがおすすめとなります。
Wi-Fiと比べ、干渉波が非常に少ないことから通信としても非常に安定しており、さらに、LTEの技術を採用していることにより、Wi-Fiには無いモビリティの高さもメリットになっています。また、SIM認証かつクローズドなネットワーク構成により、sXGPではセキュアなローカル無線通信ネットワーク脳構築が可能になります。
こういったことから、通信速度がそれほど必要ではないロケーションにおいてはsXGPが非常に優秀である事がお分かり頂けるかと思います。
他のプライベートネットワークとの比較
アクセスポイント間の連携を基本的に行わないWi-Fiはハンドオーバーに弱く、接続するアクセスポイントを切り替える際に通信が途切れることがあります。カバー範囲が狭いために、通話で利用するために多くのAPを設置してくまなくカバーエリアを構築しないとなりません。そのため、通常の設計より多くのAPを設置する必要があり費用が増大する可能性があります。メリットは多くの機器がWi-Fiに対応していること、運用費につきましては回線費用のみとなっていることです。
一方sXGPは、基地局が連携してハンドオーバー処理を制御する。これにより、移動しながらでも通信が途切れることがなく、業務ユースでの快適、確実な通話に寄与します。通話に加えてチャットや業務アプリの利用も可能となっており、実際の使用では端末にSIMを挿入し認証を行います。ID/パスワード方式のWi-Fiと異なり、なりすましは不可能でセキュイティ面が強化されます。対応スマートフォンはAndroidの数機種に限られていましたが、iPhone/iPadがiOS16.4から利用可能になりました(サービスによって端末の対応可否は異なる)。また、最近はeSIM対応サービスも登場し利便性が向上しています。
FMCは固定電話と携帯電話の機能をひとつにまとめる仕組みです。屋外にある基地局を利用するため、電波品質はキャリア任せとなってしまい、構内で利用できない箇所が発生する可能性がございます。FMCサーバーに固定電話と携帯電話の情報を登録すると、固定電話にかかってきた電話をスマートフォンで受けたり、スマートフォンを内線として使用したりできます。FMCは、通信キャリアを統一しなければならない点がデメリットです。携帯電話と固定電話のキャリアがバラバラの場合は、どちらか1社にまとめなければFMCは利用できません。また、外部の基地局を経由して通話するため、停電などが発生すると通話ができない可能性があります。
ローカル5GはsXGPの通信速度が著しく向上した、上位互換版と考えていただければと思います。高精細画像のリアルタイムでの共有などが可能となるシステムです。
今現在、どちらかというよりは、スマートフォンによる通話・情報共有はsXGP、電子機器など定点監視はWi-Fiの利用用途でわけることで投資を抑制しハイブリット無線化が最適解ではないかと考えております。現在、PHSとWi-Fiで利用いただいてる企業様はPHSをsXGPに置き換えるだけというイメージをもっていただくと非常にわかりやすいかとおもいます。
医療業界導入イメージ
PHSの入れ替えではなくPBX機能や業務効率化、ナースコール連携についてもご提案させていただきます。多くの病院様と打ち合わせを実施させていただいておりますが、医師の皆様、看護師の皆様、また総務の方々など多くの業務があり業務効率化が至上命題になっているとお聞きしております。
まずは、現在対応している業務について、すこしでも業務効率が良くなるようご検討いただければ幸いです。
製造業界導入イメージ
製造業界向けのソリューションは、sXGPを導入することによる、構内の内線通話現場における画像及び動画による情報共有の迅速化など、トラブル対応、現場によるDX化など多岐にわたります。
PHSからスマートフォンになることにより多くのアプリケーションが利用できることとなります。監視カメラにつきましてもsXGP搭載の監視カメラがありLANケーブル不要で設置が可能となります。現場にて紙ベースで対応していた点検報告書についてもスマートデバイスを活用し作業効率が向上し、承認行為など、Webブラウザで完結でき業務時間の削減がみこまれます。
おわりに
今回は、PHSの後継サービスの1つとしてsXGPの概要とほかの無線ネットワークとの違い、活用例をご紹介させていただきました。
京セラみらいエンビジョンは、IoT、Wi-Fi、sXGP、ローカル5Gとすべての無線ソリューションを構築・運用した経験がございますので、どの無線ネットワークが最適かお悩みの場合はお気軽にご相談をしていただければと思います。