目次
1. 映像伝送の現場を支えるLiveUの仕組み
LiveUとは、映像中継用の専用装置で、複数のモバイル回線を束ねることで安定した映像配信を実現する仕組みを持っています。この仕組みは「ボンディング」と呼ばれ、複数の通信回線(例:ドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)を同時に活用し、一本の太い仮想的な回線を構築するイメージです。これにより、1本の回線に障害や遅延があっても他の回線がそれを補い、映像が途切れることなく視聴者に届けられます。
LiveUは映像中継の現場において、特に報道やイベント中継、スポーツ現場など、通信インフラが整っていない場所でも高品質なライブ配信を可能にする点で評価されています。
■三信電気株式会社 LiveUシリーズ
※三信電気株式会社WebSite(https://www.sanshin.co.jp/)より
2. 通信キャリア回線の課題と限界
しかし、どれだけ通信キャリアの網が広がっていても、「圏外」や多くの利用者が特定の場所に集中する事でおこる「輻輳」により、安定した映像伝送が困難になるケースは少なくありません。たとえば山間部や地下施設などのキャリア電波の状況が悪い場所ではキャリアの基地局と接続できず、LiveUの伝送性能が発揮できない場合があります。また、大規模イベントなどで多数の利用者が一斉に接続する状況では、キャリア回線の帯域が逼迫し画質が低下することもあります。
3. ローカル5Gで「圏外」をエリア化するという発想
こうした課題に対し、補完的に活用できるのが「ローカル5G」です。ローカル5Gは、企業や自治体などが自ら専用の5Gネットワークを構築できる仕組みであり、通信事業者の回線が届かない場所でも安定した通信エリアを自前で確保できます。たとえばイベント会場の特定エリア、工場敷地内、地下通路、山林などにおいて、通信事業者の圏外地域をピンポイントでローカル5Gによってカバーすることで、LiveUの伝送経路として活用することが可能になります。これにより、キャリア回線とのミックス構成でLiveUは更に安定した映像品質を保つことができます。
4. ベストミックス運用による実効性と課題
LiveUが標準で備えるSIMスロットにローカル5GのSIMを加えることで、これまでキャリア回線のみに依存していた伝送経路がさらに多様化します。これにより、通信キャリア回線が不安定な環境でも、ローカル5Gが自律的なバックアップ経路となり、映像中断リスクを最小化することが可能です。
一方で、ローカル5G導入に際しては、基地局の設置場所の確保や運用、電源、伝送路の確保など技術的・運用的な課題も存在します。特に、キャリア回線のエリアとローカル5Gのエリアとのオーバーラップ範囲の確認など、現場ごとに検証が必要です。
5. 今後の活用に向けた展望と導入のすすめ
弊社ではLiveUを取り扱う三信電気株式会社様との協業により、ローカル5Gネットワークの構築だけでなく、LiveUを含めた映像伝送システム全体の設計・運用・サポート体制のご提供が可能です。現場ごとに異なる環境・要件に対して、通信と映像の両面から最適なソリューションを共に構築できる体制が整っています。
映像伝送は今後さらに需要が高まる分野であり、特に屋外や仮設環境、遠隔地での中継においては、柔軟で高信頼なネットワーク構成が求められます。ローカル5GをLiveUの一要素として組み合わせることで、キャリア回線の限界を補完しながらより安定した映像配信体制を構築できる可能性が広がります。
このようにローカル5Gは決してキャリア回線の代替ではなく、「届かないところを補う」ための手段としても有効です。だからこそ、現場のニーズに即した通信設計が求められます。今後も通信インフラに携わる者として、こうしたベストミックス運用の事例を積み重ね、映像伝送の現場に新たな価値を提供していきたいと考えています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
京セラみらいエンビジョンまちづくりラボ

京セみらいエンビジョンのラボでは、ローカル5Gネットワークを体感いただけます。 ラボ内には、Wi-Fi6の環境も構築していますので、ローカル5GとWi-Fi6の違いを同時に体感していただくことが出来ます。
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