目次
1. 映像伝送をめぐる技術進化とこれまでの取り組み
当社ではこれまで、ローカル5Gを活用した低遅延映像伝送システムや、その活用範囲を広げるエンターテインメント分野での応用事例について、複数のコラムを通じてご紹介してきました。たとえば、映像制作・中継の現場で重要となる「エンドツーエンドの低遅延」に着目し、カメラやディスプレイ、ケーブルなど、各構成要素の影響も含めて総合的に検討すべきであることを提案しています。
こうした技術的な議論は、主に日本国内におけるローカル5Gの実証事例を中心に展開してきましたが、海外に目を向けると、すでに本格導入に踏み切っている先進的な取り組みも見られます。その中でも特に注目されているのが、米メジャーリーグにおける活用事例です。
本コラムでは、FOX Sportsが2025年のMLBオールスターゲームにおいて採用した、いわゆる「プライベート5G」ネットワークを用いた映像中継技術について紹介します。
また、この事例※を通じて、日本におけるローカル5Gの今後の可能性を考察します。
※本コラムは、下記サイトの記事を参考に執筆しております。
参照元 tvteck: Fox Sports to Tap Private 5G Network, Full Ump Crew Cams for MLB All-Star Game
2. FOX Sportsが導入するローカル5G中継の全貌
2025年7月16日に米テキサス州アーリントンで開催されたMLBオールスターゲームにおいて、FOX Sportsは複数の審判カメラを完全ワイヤレスで中継映像に組み込むことを発表しました。
この試みでは、審判に小型カメラを装着させ、フルHDの映像をローカル5Gネットワークを通じて遅延なく伝送し、視聴者に臨場感あるカメラアングルを提供します。スタジアム内に敷設されたプライベート5Gネットワークがその伝送路を担います。
FOX Sportsは過去にも、選手や審判に装着する「ボディカム」などの色々な中継技術を試みてきましたが、今回は塁審にワイヤレスマスクカメラを用いた映像中継を実施しました。
3. ケーブルからの解放がもたらす撮影の自由度
今回のMLBオールスターだけでなく中継現場でのケーブル接続は最大の制約要因でした。運動量の多いスポーツ現場では、ケーブルの取り回しがカメラワークや演出の自由度を大きく制限し、時には安全上のリスクにもつながっていました。
今回のFOX Sportsの試みは、「ケーブルからの解放」という技術的進歩が、演出面だけでなく運用面にも大きな効果をもたらすことを示しています。
ローカル5Gによる映像伝送が安定し、かつ高画質・低遅延であれば、今後の中継現場のスタンダードが一気に変わる可能性すらあります。
4. 本格導入を後押しした「収益性」のあるコンテンツ
今回のシステム導入が実現した背景には、MLBオールスターゲームが視聴者数・広告収入の両面で非常に大きな価値を持つコンテンツである点が挙げられます。つまり、十分な収益が見込める場面だからこそ、実証実験にとどまらず、本格導入へと踏み切ることができたのです。
この考え方は、当社が日本国内でローカル5Gを提案する際にも、最も重視している視点です。演出や中継の価値が視聴者やスポンサーにとって大きいイベントほど、技術投資の回収可能性が高くなり、導入のハードルが下がるという現実があります。
逆説的ではありますが、収益性の高い映像コンテンツこそ、ローカル5Gなどの新技術を活用することで、より魅力的な映像を実現でき、さらなる収益拡大につなげることが可能なのです。
5. 今後の展望と国内活用へのヒント
特に今回参照した記事※で印象的だったのは、プライベート5G以外の選択肢はなかったというコメントです。
※本コラムは、下記サイトの記事を参考に執筆しております。
参照元 tvteck: Fox Sports to Tap Private 5G Network, Full Ump Crew Cams for MLB All-Star Game
我々も無線技術を提案する立場として、ローカル5G以外の無線ネットワークを検討しますが、今回の事例では間違いなくローカル5Gが最適な技術であると感じます。当事例は、ローカル5Gが単なる「検証用ネットワーク」から「商用の映像伝送基盤」へと進化しつつあることを象徴しています。
日本国内でも、スポーツ・音楽イベント・報道分野などにおいて同様の活用が期待される中、今後は収益性・演出効果・運用性をセットで検討することが求められます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
京セラみらいエンビジョンまちづくりラボ
京セみらいエンビジョンのラボでは、ローカル5Gネットワークを体感いただけます。 ラボ内には、Wi-Fi6の環境も構築していますので、ローカル5GとWi-Fi6の違いを同時に体感していただくことが出来ます。
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