ローカル5GのKPIを見てみよう

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1. KPIって何?

ローカル5Gを導入検討するにあたって様々な検討事項があると思います。
導入初期の何に使うかといったところからどのように設置するか、どのぐらいの金額でどのぐらいの費用対効果が見込めるか等々、導入までに色々考えなければなりません。

そして導入後、運用をどうするのかというところも設置状況に合わせて考える必要が出てきます。
しかしあまり触ったことのないサービスで運用をどのようにするのかというのも難しいところがあると思います。
運用に関して色々な課題がありますがローカル5Gネットワークの品質管理に関して目に見えない電波をどのように管理していくかというのも検討時の課題になると思います。

今回は運用、ローカル5Gネットワークの品質管理の検討の一助となるようKPIの考え方について記載をしていきます。
長いコラムになりますがその分有益になる情報も記載しておりますので是非最後まで読んでみてください。

KPIとは「Key Performance Indicator」の略語で、一般的には「重要業績評価指標」や「重要達成度指標」と意味は一緒になります。
ITにおけるKPIは機器やサービスのパフォーマンス指標を指します。
無線通信、モバイル系のKPIは通信がどのように行われているかを理解していないと装置側で収集している数字を見てもまったく意味が分からないものとなってしまいます。そしてあまり資料がない、資料を見てもよくわからないということが多く、管理をしようかと思ったが挫折・・・という例もあるかと思います。状況によって気にする必要がないKPIもあり、これも通信を理解していないとどれを気にしなくていいのかが、わかりにくくなっています。
例えばKPIとしてハンドオーバーの成功率というのはよくKPIとして見れるようになっていますが、ハンドオーバーのKPIと言われてもそれが何でどうなったらダメでどうなっていればいいのかというのが分からないと思います。

このコラムでQCT社ローカル5Gシステムの「OmniPOD」で取れるKPIの例と2つのKPIについて考え方を記載しますので、どのようにKPIを考えるべきなのかというのを是非見てみてください。

2. KPIを見てみる

2-1. KPIの例を見てみる

では実際にKPIが実際の機器でどのように見れるのか、例を出してみます。

local5g_vol0014_1.png
これはQCT社のOmniPODで取得できるKPIのうち、RANの一部分を切り取ったものです。

local5g_vol0014_2.png
OmniPODではこのようにグラフでもKPI表示が出来るようになっています。
このKPIを表示する機能についてはベンダーによって搭載されている、されていない機能があり、ただのログで表示されるものやOmniPODのようにグラフィカルに表示されるなど、様々です。
購入検討をしている場合、どのようなKPIが取得できて、どのような方式で表示されるのかを確認しておきましょう。

2-2. 接続率を見る

ではまず基本となるUEの接続から見てみましょう。

local5g_vol0014_3.png
OmniPODの場合RRC Setup Success Rateと例の図には出ていませんがNG Setup Success Rateを確認することができます。
ではRRC Setup Success Rateとはそもそも何なのかというところを考えてみます。
RRCとはRadio Rresource Controlの略でいろんな無線の制御を行う為の通信プロトコルになります。
通信を始める際にRRCをSetupする必要があり、長時間通信を行わなかった場合(RRC_IDLE状態)や圏外から復帰した時や電源を入れた時などにまずRRCの用意をします。

local5g_vol0014_4.png
単純に書くなら最初にこんな動きをして通信を始めるわけです。この数字はローカル5Gの環境であれば100%である必要があると思います。
ではRRC Setup成功率に関して悪くなる条件を考えてみましょう。
細かく見ると色々な状況があるかもしれませんが、単純に考えると
 ① RRC Setupのやり取りが出来ないぐらい電波環境が悪い
 ② システムへの在圏者が上限値一杯になっていて新しくリンクを張る余裕がない
この2つが原因と考えられます。
原因を調べる為にいつ成功率が下がっているのか時間が分かればその時間のUEの動きを確認することでどちらが原因かわかると思います。
基本的には電波環境が問題であることが多く、メッセージのやり取りも満足に出来ない状態であれば、ほぼ圏外になっている場所があることが多いです。もし数値が下がっているようであれば周辺状況がローカル5G導入当初から変わっていないか等をチェックしましょう。

2-3. ハンドオーバーを見る

次に例として挙げるものとして、Intra/Inter HandOver Success Rateを解説します。
RRC Setup Success Rateもよく見るKPIですが、Intra/Inter HandOver Success Rateも接続成功率と同じぐらい重要なKPIになっています。
Intra/Inter HandOver Success Rateもまず分解してどのようなKPIかを確認していきます。
HandOverについてはなんとなくわかる方も多いと思います。UEが移動することで基地局を切り替えることですね。Success Rateは成功率なのでこれもOK。
大体最初にこのKPIを見るとIntraとInterって何だ・・・?となると思います。
文字も似ていて紛らわしいのですが、簡単に言うとCUが変わるHandOverか、CUが変わらないHandOverかで呼び方が変わります。CUが変わるとInter、変わらなければIntraです。

local5g_vol0014_5.png
※すごく簡単な図で書くとこうなります。

上記の切り替えがうまくいくか、行かないかでHandoverの成功率が変わります。
では仮に成功率が悪い場合どのような状況が考えられるかというところですが、こちらもRRC成功率のように環境要因が挙がります。

local5g_vol0014_6.png
例えば、こんな部屋(上図)があったとして、機械が5台あってロボットが巡回をしていたとします。
機械は天井まで高さがある、UEはロボットが装着していると思ってください。
(エリアに穴がありすぎる!というツッコミは一旦置いといてください・・・)

ロボットの巡回コースをよく見ると、機械④あたりにピンクエリアと緑エリアのエリア端があり、端っこを通るようにルート設計されています。
機械④の下部分を通る時に緑エリアのアンテナは機械によって遮蔽されてしまうので電波自体は弱くなります。電波は常にUEでも計測していて結果を基地局とやりとりしています。機械④の下部分を通る時に機械で遮蔽されて緑エリアの電波は弱くなると思うので、基地局側がピンクエリアに移りなさいと指令を出すのですが、ちょうど動線の近くに小さい機械⑤があり、ピンクエリアの遮蔽物になっています。こうなるとピンクエリアの電波も弱くなっている可能性があり、UEはピンクのエリアに移れと言われているので移ろうとするけど、ピンク電波が弱すぎて移れない、結局命令は失敗に終わるというパターンが考えられます。
こういう状況でエリア移動に失敗し続けると、緑のエリアも見えなくなってしまった場合、最悪圏外、通信が途絶えるといった可能性も出てきます。
ではエリアをいっぱい重ねればいいかというとそうではなく、いっぱい重ねすぎると電波干渉のせいでエリア移動ができないということも出てきます。
また、適切なエリアの移動をパラメータとして設定できていない場合もこういったことが出てくるので、成功率が下がった場合、電波環境とエリア移動のパラメータを確認してみましょう。

3. KPIについての考え方まとめ

今回はKPIについて紹介をしました。KPIは短期、中期、長期とローカル5Gを運用するにあたって重要な項目となります。
自社でKPIをしっかり確認して運用するというのは理想ではありますが、機器によっては望んだKPIが機能実装されておらず取得できなかったり、取得できたとしても何に使う指標なのかわからずという方も多数いらっしゃると思うので実際には扱いが難しいものとなります。
しかしKPIが確認できるようになる、数値の変化の意味がわかると様々なことが数値からわかる為、導入を検討されているのであれば是非覚えて活用いただきたいものになります。

また、KPIの内容やしきい値を決めかねるということであれば長年移動体通信を生業としている当社に是非ご相談ください