GPSとみちびきについて

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1. 時刻同期と衛星測位システム

 モバイル通信ネットワークでは、携帯端末と無線基地局間の通信や隣接する無関係な無線基地局との電波干渉を抑制する際に通信タイミングの同期を取る必要があり、LTE通信の頃からグランドマスタークロック(GMC)装置でマイクロ秒(μs)単位の時刻同期確度で担保が可能なPTP信号を生成・利用しています。現在モバイル通信の主役はLTEからより高速な5G 通信へシフトしつつありますが、5Gでは、更に高精度のナノ秒(ns)単位での時刻同期確度で担保可能なGMCが必要となります。これらの精密な時刻同期処理のベースとなる信号を供給するのが、GNSS:Global Navigation Satellite System(全地球航法衛星システム)と呼ばれる衛星測位システムです。
 GNSSで一番有名なものは皆さんご存じGPSです。GPSはグローバル・ポジショニング・システムの略でアメリカが打ち上げた31基のGPS衛星が地球の周囲を周回しており、GPS受信機でそれらの数個の衛星から届く信号を受信して利用します。これ以外にもGNSSとしては、ロシアのGLONASS(24基体制)、EUのGalileo(30基体制)、中国のBDS(55基体制)があり、これだけでも大変多くの測位用衛星が地球の周りを周回していて、昨今のスターリンクなどの大量の衛星群も考えれば、地球の周りがいかに衛星だらけかという話も良くわかりますね。

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米国GPS衛星の周回軌道イメージ(左)と地上から見た衛星のルート(右)

2. 日本独自の衛星測位システム

 通常時刻同期には最低4基以上の"良好な可視状態"衛星を必要としますが、GPS衛星は全世界での利用を想定しているため、常に期待する数の衛星が日本上空の見やすい位置に都合良く居るとは限りません。その為、これを補完する衛星として日本独自に打ち上げた測位衛星システムが『みちびき』です。  
 みちびきはGPS衛星と互換性がある測位衛星であり、GPS衛星が高度約2万kmで中高度軌道(MEO)を取るのに対し、約3万2千km~4万kmの高高度で静止軌道から45°傾けた傾斜対地同期軌道(IGSO)と呼ばれる楕円軌道で周回しています。(静止軌道を取る衛星もあり)
特定地域の上空に長時間留まることから、準天頂軌道とも呼ばれ、1基の衛星が約7~9時間程度をかけて日本の天頂付近を通るように設計されていて、このおかげで、ビル密集域や住宅密集地、山間部など日本各地の様々なシーンでGPS信号を受信し易くなっており、更に地上機器が信号補足する時間も、GPS衛星のみの場合と比較して半減しています。
 高度が約3万2千km~4万kmとなっているのは、衛星が南半球の豪州上空に居る時は地球に最も近く、北半球の日本上空に居る時は最も遠くなる軌道になるからで、これにより日本上空で見える時間が長くなるように計算されています。

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みちびき衛星の周回軌道イメージ(左)と地上から見た衛星のルート(右)

 ただし、みちびきの衛星は現在4基が稼働していますが、交代で日本上空にまわってくるため、常に4基の衛星が見える状態ではありません。この問題を解決するため、今年度から2025年度にかけて3基の衛星を追加で打ち上げ、最終的には計7基体制で運用するそうです。

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参照:みちびきウェブサイト
https://qzss.go.jp/overview/services/isos7j000001tzum-img/isos7j000001tzw9.jpg

3. 測定してみよう

 このような対策のおかげで、日本でGPSアンテナを設置する場合は、天頂が望める場所であれば、必ずアンテナが南方に向いてなければいけないといった事はなくなりつつありますが、やはり他国の衛星の状況も含めると南向きの方が圧倒的に受信し易い状況には変わりません。なので、ローカル5Gでは事前にGPSアンテナをどこに設置するかも重要になります。
 GPSアンテナの設置場所の良し悪しを確認する方法として、Androidスマホであればアプリストアにフリーで使える測定アプリが提供されているので、それを利用すれば信号強度が容易に確認できます(※時刻から各衛星の予想位置を表示するだけのアプリもあるので注意して下さい)。ローカル5Gの導入をお考えの場合は、事前に設置場所近辺の色々な場所で測り比べて、GPSアンテナ設置に最適なポジションを探してみると良いでしょう。

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GNSS信号測定アプリの測定結果画面例