給与仕訳業務のひと手間
僕は製造業の会社に勤める入社10年目の経理担当です。僕の会社では、給与の支払い処理と仕訳作成を経理が行いますが、管理会計を導入しているため給与仕訳を部門別に進めなければならず、ひと手間かかっています。この「ひと手間」は、単なる時間消費以上の問題でした。月末の限られたリソースを圧迫し、常にヒューマンエラーのリスクと隣り合わせ。結果として、経理部門は本来注力すべき戦略的な分析業務に時間を割けず、組織全体の意思決定にも影響を及ぼしていました。
給与仕分け業務の流れは、まず給与仕訳に必要な当月の元データを人事部門からもらい始まります。ファイル内には基準内賃金、基準外賃金、残業代、通勤手当、家族手当などの給与に関する項目が30項目程並んでいて、部門ごとにそれぞれの項目に金額が入力されています。部門は50以上あるので、ファイルには1,000以上の金額が入力されています。
この部門ごとにまとまっている金額を、項目ごとに仕訳変換用のエクセルに貼り付けていきます。このエクセルのセルには関数が入力されていて、項目の内容に応じて仕訳が作られます。仕訳が作られたら、会計システムに取り込んで完了です。

ただ、データの中には金額が空欄の部門もあるため、貼り付け前にファイル内を確認しなければなりません。項目ごとに50以上の部門を一つひとつ確認して、データを整理してから貼り付けをしていきます。
この毎月の給与仕訳は、ただ単に2時間かかる作業ではありませんでした。金額の正確性が求められるため、常に細心の注意を払い、月末の忙しい時期には見えない精神的なプレッシャーがかかっていました。部門ごとに1,000以上の数字を確認し、Excelに貼り付ける作業は、まさに「見えない残業」であり、万が一の入力ミスは会社の信頼に関わる重大なリスクでした。本来、経理が注力すべきは、数字から経営課題を読み解き、未来を予測する分析業務です。しかし、目の前の定型作業に追われ、その時間を見つけられずにいたのです。
もちろん、この非効率な作業を改善しようと試みなかったわけではありません。複雑なExcelマクロの導入を検討したこともありましたが、部門ごとの細かな条件変更に対応しきれず断念。RPAも候補に挙がりましたが、経理特有の柔軟なデータハンドリングには不向きな面がありました。大規模な会計システムの改修は費用対効果が見合わず、結果として「手作業が最も確実」という状況が続いていたのです。
そこでAlteryxを使ったところ、これまで2時間かかっていた給与仕訳の業務が、2秒でできるようになり、この根深い課題を一挙に解決し、経理業務にDXをもたらしたのです。
毎月2時間の給与仕訳業務が2秒で完了
ステップ① Alteryxにデータを読み込ませる
まず初めに、Alteryxに次の3つのデータを読み込ませます。一つ目は、人事部門からもらった給与の元データです。これには、給与に関する項目と金額、部門コードが入っています。二つ目は、給与に関する項目と経理の勘定科目を紐づける一覧表のデータです。三つ目は、仕訳のパターンをまとめたデータです。このデータには、勘定科目・内容ごとで借方と貸方にどのように仕訳入力するのかがまとめられています。

これまで手作業でデータを突き合わせ、フォーマットを整えていた作業は、まさに神経を使う「知的な肉体労働」でした。Alteryxでは、異なる形式の3種類のデータを直感的なGUI操作で瞬時に統合することができます。特に、給与に関する項目と勘定科目の紐付けや、仕訳パターンを定義したデータは、一度ワークフローを構築すれば、人事制度の大きな変更がない限り、毎月同じロジックを繰り返し適用できます。これにより、経理担当者は「データ統合の専門家」ではなく、「ビジネスロジックの設計者」へと役割をシフトできました。
ステップ② Alteryxが仕訳を作成。会計システムへの取り込みファイルも出力
3つのデータを読み込ませると、後は自動でAlteryxが仕訳を作ってくれます。まず、Alteryxが人事の元データに入力されている給与に関する項目を勘定科目に置き換えます。次に、置き換えた勘定科目から仕訳のパターンに従って、仕訳を作ります。最後に、会計システムに取り込むためのファイルも出力してくれます。

これで給与仕訳のデータができ上がったので、会計システムに取り込んで終了です。
以前の仕訳変換用Excelは、複雑な関数が絡み合い、作成者以外には理解しにくいブラックボックスと化していました。しかしAlteryxのワークフローでは、データがどのように加工され、どのようなロジックで仕訳が生成されるかが可視化されます。これにより、ロジックの正確性を複数人で確認できるようになり、監査対応の容易さ、そして何より「担当者の属人化」という大きな課題を解消することができました。
なぜAlteryxを選んだのか
給与仕訳の自動化にあたり、RPAやPythonなど様々な選択肢を比較検討しました。RPAは定型操作の自動化には優れますが、柔軟なデータ加工や複雑な条件分岐、そして大量データの高速処理には限界がありました。一方、Pythonは高度なプログラミングスキルが必要で、経理部門での導入障壁が高くなっていました。そんな中でAlteryxが際立っていたのは、ノーコード・ローコードで誰でも直感的に複雑なデータ加工ロジックを構築でき、そのプロセスが視覚的に理解しやすい点です。これにより、経理の現場が自ら課題を定義し、迅速に解決策を実装できる、まさに「現場主導のDX」を実現する最適なツールだと確信しました。
2時間→2秒の先へ:Alteryxが経理にもたらした副次効果
給与仕訳業務の自動化は、単なる時間短縮に留まりませんでした。最も大きな変化は、ヒューマンエラーが事実上ゼロになったことです。これにより、月末の再確認作業によるストレスが激減し、経理担当者は「数字の入力者」から「数字の分析者」へと変貌を遂げました。浮いた時間で財務データの多角的な分析や予実管理の精度向上、経営層への報告資料の深掘りといった、より戦略的な業務に集中できるようになりました。結果として、月次決算の早期化にも貢献し、会社全体の意思決定スピードも向上しています。現在では、人事部門でのデータ集計やマーケティング部門でのWEB分析など、経理以外の部門でもAlteryxの活用が広がり始めています。
Alteryx
セルフサービスデータ分析ツールの決定版です。分析の前処理から機械学習による分析出⼒までを、ノンプログラミングで⾼速に処理します。
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