AIとの付き合い方

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本コラムでもいくつか記事として挙げているAIですが「AIに仕事を奪われる」や「AIが嘘をつく」といったマイナスのイメージと「仕事、趣味、家庭生活などのさまざまな領域で活躍し便利で効率的なものにしてくれる」等のプラスのイメージが混在しています。

今回の記事ではAIとの付き合い方、特に権利について考えてみたいと思います。

争点となる権利

AIを使用し、権利について考えると一番最初に出てくるものはやはり著作権になります。
AIから出力されるものは基本的には学習データを基に作成されたものとなり、学習データのない空っぽのAIは一般的に公開されていません。
Googleが提供しているGoogle Bard然り、OpenAIのChatGPTも同様です。
学習データはどのように集めているかというと、例えば翻訳アプリに「この通信のデータは二次利用されます」等のデータを使用する旨が記載されているなどしてそういったものが学習データに利用されるほか、政府や研究機関などが公開しているデータを利用することもあります。
また、外注により集める方法などがありますがその場合、著作権で保護されたデータが入る可能性もあります。

さて、仮に著作権で保護されたデータが入ったAIを利用してしまった場合、そのAIから出力されるデータは誰に帰属するのでしょうか。

この時登場人物は3名になります。
1.データを作成した人
2.AIを作成した人
3.AIから出力した人

令和5年6月、文化庁から『AIと著作権』といった文書が提出されています。

"著作権の基本的な考えとしては、第一に著作物の「公正な利用に留意」しつつ「著作者等の権利の保護」を図ることで、新たな創作活動を促し、「文化の発展に寄与すること」を目的としています。"-令和5年度著作権セミナー『AIと著作権』より

著作権法により保護される対象は著作物になります。
著作物の定義は「思想または感情を創作的に表現したものであって文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」となります。
よって、単なる事実の記載や、ありふれた表現、表現に含まれないアイディアは著作物には含まれません。

上記のことを踏まえて、登場人物3名についてそれぞれ考えていきます。

1.データを作成した人
表現したものにもよりますが、基本的には著作権を持っているといえます。
ただし、上記に該当するような著作物ではないものなどの場合、著作権法では保護されません。

2.AIを作成した人
AI自体は著作物といえますが、それによって作成されたものがAIを作成した人に帰属するかといわれると首を縦に振ることは難しいように感じます。
あくまで道具を作ったのみとなり、その道具から生み出されるものまでは本人のものにならないからです。
これは筆を作った人がその筆で書かれた絵画の著作権を持たないと置き換えてみると納得がいくかと思います。

3.AIから出力した人
問題はここになります。
確かに筆を使って絵画を描いたのであればその絵画が描いた本人のものになりますが、AIから出力したものと考えると少し難しい話となります。

主張と反対意見の整理

何故、難しい話となるのか、それは著作権に対して主張と反対意見の双方が存在するからです。
いち主張として筆を用いたものであるから出したものは自分の著作物とする意見。
もう一方が著作物を取り込んで出力したものが著作物ではなく盗作とする意見です。
本件は段階に分けて検討する必要があり、結果から述べると決着はついていません。

まず初めに、データとして利用した著作物は段階的に関係する著作権法の条文が異なっていきます。
AIの開発、学習段階では著作物が学習用データとして収集され、文化・研究のためこちらは無制限で利用することが可能といった話がありました。
一方生成、利用段階では生成した画像などをアップロードや販売といった行為が含まれます。
法整備段階ではこのような著作物の利用にあたり、技術革新を阻害しないよう柔軟な対応を行うことが適当とされ、ある種例外的にAI作成者に対しメリットのあるような法になっています。

次に生成段階ですが、押さえておきたいのは著作権侵害の要件となります。

著作権の侵害は次の2段階で判断を行います。
・他人の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるかという点
・既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いているか(独自捜索などでないか)という点

そのため、著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められる生成物のアップロードや販売を行うためには、著作権者の利用許諾が必要であり、許諾なく行った場合は著作権侵害とされています。

さて、ここでまた問題となってくるのは類似性、依拠性をどのように認めるかという点になりますが、少し長くなってしまったので次に回したいと思います。

次の小題は
・類似性の証明
・AIによる生成物が著作物に当たるのか
・実際の判例
等を書き連ねます。